日本語教育推進法は、30年以上放置されてきた自治体丸投げ、ボランティア頼みの日本語教育に終止符を打つか

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「Getty Images」より

 2019年6月28日に「日本語教育の推進に関する法律」(以下、日本語教育推進法)が公布、施行されました。この法律は、外国人や日本語を母語としない方々に対する日本語教育が日本での生活を営む上で重要であるという認識の下、多様な文化を尊重した活力のある共生社会の実現を目指すためにその推進について基本理念や国、自治体、事業主の責務等を定めたものです(法律の概要は文化庁のホームページから確認できます)。

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 この法律における「日本語教育」とは、日本人(日本語ネイティブ)が学校などで習う国語とは異なる、第2言語(外国語)として学ぶ日本語を教える行為のことを指していて、その教育に一定の専門性を要する分野でもあります。しかしながら、日本語教育はこれまで法的な根拠を持たず、民間日本語学校や外国人が多く暮らし対応を迫られる自治体、ボランティア団体などがそれぞれ独自に行ってきた部分が大きく、その質や量、教育機会へのアクセスは地域によって格差がありました。

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日本語教育推進法は、30年以上放置されてきた自治体丸投げ、ボランティア頼みの日本語教育に終止符を打つかの画像2 ウェジー 2019.05.01

 1989年に改正され翌年の1990年に施行された改正入管法では、日本にルーツを持つ日系ブラジル人等の2世、3世が「定住者」という在留資格によって日本で就労制限なく来日することができるようになりました。当時、日本経済の成長の一方で、いわゆる3K(きつい、汚い、危険)の仕事を中心に人手が不足していたことで、それを補うことを目的にして行われた法改正です。

 これに伴い、多数の日系人が家族と共に来日し、専門の派遣会社によって用意された住居のある地域に集まって暮らしながら、自動車産業等、製造業の現場に送り込まれました。その子どもたちは地域に設立された民間のブラジル人学校等に月数万円の学費を支払って通学するなどしていました。当時は「日本には一時的に仕事をするため」にやってくる、いわゆる「出稼ぎ」目的の来日も少なくなく、日本政府も暗黙の内に「いつか帰るだろう」との前提に立っていたと見られます。このため、政府は日系人の受入れに際し特に基本的な対応について方針を定めることもなく、生活拠点である自治体にある意味で「丸投げ」をした状態となりました。

日本は「外国人労働者を“使い捨て”てきた」

 しかし、2008年のリーマンショックによって日系人の多くが雇止めとなり、派遣会社は潰れ、仕事も住居も失ってしまうケースが多発しました。ブラジル人学校等に私費で子どもたちを通わせていた家庭は費用を負担できずに退学となりましたが、日本語がわからなかったり、公立学校への転入手続きがスムーズにできなかったりなどの理由から、不就学状態に陥った日系の子どもたちも少なくありませんでした。

 日本語教育推進法の法律案を作成し、その成立に尽力してきた超党派の議員連盟「日本語教育推進議員連盟」において、立ち上げの中心となった同会会長の河村建夫衆議院議員や事務局長、馳浩衆議院議員らは当時、その影響を強く受けた地域の一つである静岡県浜松市で視察を行い「愕然とした」と言います(馳浩氏。2019年1月同氏への筆者によるインタビューにて)。

「その時にやっぱり愕然としましたね。まあ間は端折ってはっきり言いますけども、我が日本国はですね、経済状況によって企業は人を切るんだなと。最初に切られるのは、立場の弱い外国人労働者だったんだな。」(馳浩氏、同インタビューより)

 視察に同行した議員らは、こうした状況を目の当たりにした上で、今後少子高齢化による生産年齢人口の減少に伴い人手不足が深刻化する中で外国人が「働きたい」と思える国になるためにも日本語教育に国策として取り組む必要がある、と、議員連盟を立ち上げるに至ったと言います。

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