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なぜ僕たちは上司や先輩に従順なのか? ホモソーシャルにおける“上下関係”の力学

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「Getty Images」より

 昨年世間を騒がせた「日大タックル問題」に代表される体育会系組織の暴力事件。あるいは、頻発する省庁や大企業による“不祥事隠し”の問題。暴行や不正を働いた当事者に罪があることは間違いありませんが、これらは単に個人の責任に帰せられるものではなく、組織的に生み出されている問題といえます。

 そこには忖度の連鎖や理不尽の強要を生み出す構造があり、ホモソーシャルに根づく“上下関係は絶対”という文化がその発生源となっているのではないか……。本サイトで「先生、“男らしさ”って本当に必要ですか?」を連載している恋バナ収集ユニット「桃山商事」の清田代表は、新刊『よかれと思ってやったのに──男たちの「失敗学」入門』 において、「上下関係に従順すぎる男たち」という問題を男性当事者の目線から考察しています。

<もしかしたら我々男性は、これまで「そういうものなんだから仕方ない」という理由にならない理由で片づけすぎていたのかもしれません>

 清田代表の新刊より、「上下関係に従順すぎる男たち」にまつわるコラムを先行公開します。

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どんな組織の中にも上下関係は存在する

 上下関係と聞くと、体育会系の部活や軍隊的な組織を思い浮かべる人も多いかもしれません。先輩の命令に逆らってはならない。監督の教えには絶対服従。上司が黒と言ったらたとえ白でも黒と言う。そんなマッチョなシーンがイメージされます。

 平成も終わり、新しく令和の時代が始まった今、昭和の香りすら漂うこの言葉はすでに絶滅危惧種……には全然なっていません。体育会系や軍隊組織に所属していなくとも、私たちはさまざまなところで上下関係に出くわすし、自分の意に反し、上司や先輩の言うことに従わざるを得なかった経験は誰にでもあると思います。

 学校や会社、趣味の集まりなど、ほとんどの組織やコミュニティには上下関係が多かれ少なかれ存在するわけで、この社会ではそれと無縁でいることは難しいはず。ところが、男女問わず誰もが経験するはずなのに、なぜか女性たちから聞く話の中には「上下関係に従順すぎる男たち」の話がやたらと登場します。例えばそれはこのようなエピソードです。

・彼氏は先輩からの誘いを断れず、私との約束を何度もドタキャンした
・「上司の命令だから」と、夫が相談もなしに転勤を決めてきてしまった
・妻子がいるのに上司とキャバクラ通いを続けている職場の男性たちが意味不明
・いつまでも学生時代の先輩に頭が上がらず、頼まれるがままお金を貸した夫
・子どもが産まれたばかりなのに、「取引先との会合だから」と深夜帰宅する夫

 さて、いかがでしょうか。先輩からの誘い、上司の命令、取引先との飲み会。確かに断りづらいですよね……。多くの男性にとって既視感のある場面ではないかと思います。

 我が身を振り返ってみても、思い当たる節がめちゃくちゃあります。私は組織に属さないフリーランスなので、直接的な上司はいません。しかし、同業者の先輩やお世話になっている年上の編集者さんはたくさんいて、特に駆け出しだった20代の頃などは、仕事を振ってくれる出版社や代理店の人たちには頭が上がりませんでした。当時は「上からの指示は絶対」という価値観の中で生きていて、企画会議中に編集長から「なんかおもしろいこと言ってよ」と無茶振りされれば、そのときのために備えて用意しておいたネタをがんばって披露していたし、仕事の打ち上げで代理店の人から「若い女の子を呼んでよ」と言われ、女友達に無理を言ってその場に来てもらったこともありました。自分自身、上下関係に弱いという自覚があります。

 なぜ女性たちの話には「上下関係に従順すぎる男たち」の話がやたらと出てくるのか。もしも男性が上下関係に弱いとしたら、それは一体なぜなのか……。この問題について、自分の体験も振り返りながら考えてみたいと思います。

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