
「Getty Images」より
昨今話題になった「2000万円問題」。当初はとんでもない誤解の記事があふれていましたが、最近になってようやくまともで冷静な記事が出てきたように思います。
ただ、今回の騒動を見ても、多くの人が老後のお金に対して不安を持っていることがよくわかります。さらに言えば、老後の不安を煽る記事のほとんどはお金に関するものです。
しかしながら、老後のお金に関する不安を解消するのは、実はそれほど難しいことではありません。そもそもお金に対する老後不安の正体はいったい何なのでしょう? それは“わからない”ことにあります。
先日、NHKの『クローズアップ現代』を観ていたら、ファイナンシャル・プランナーの深田晶恵氏が「老後不安の正体は『お化け屋敷理論』で説明できる」と言っておられました。お化け屋敷は、どこで何が飛び出してくるかわからないから怖いのであって、それらの正体やそれがいつ出てくるかがわかれば怖くなくなる、というのです。
私もこれには全面的に賛成します。人は正体のわからないもの、よく見えないものに対しては本質的に恐怖感を持つものです。では一体何がわからないのでしょうか? 老後のお金については3つの“わからないこと”があります。
まずひとつ目は支出。「老後の生活にいくらかかるのかわからない」ということです。次に収入。これは「老後にどれぐらいのお金がもらえるのかわからない」ということ。そして最後は、「そのためにいったいどれぐらいお金を用意すればいいかわからない」ということです。
したがって、この3つがわかるようになれば今よりも少しは安心できるはずです。支出と収入を考えて「これでは足りない」ということがわかったとしたら、“足らない金額”がはっきりするわけですから、その金額を目標として蓄えていけばいいことになります。
仮にその目標がとても達成できそうもない金額であれば、支出を減らすことを考えればいい、というごくシンプルな話です。つまり足らないのが不安なのではなくて、“わからない”のが不安なのです。だとすればまずやるべきことは、この3つの“わからない”をわかるようにすることです。
現在の家計の支出を把握する
支出に関していえば、最初にやるべきことは現在の生活における支出がいったいどれぐらいあるのかを把握することです。
ところが、これをやっている人は意外と少ないのです。
基本は家計簿をつけることですが、現在家計簿をつけている家庭は2割もないといわれています。特に昔と違って支出の多くが現金ではなく、カードや電子マネーが使われているため、把握しづらいという面があります。ただ、最近は便利な家計簿アプリもあり、スマホでも簡単にできるようになりつつありますから、まずは現時点での生活費を把握しておくことが大切といえるでしょう。
私自身、実際に定年前と定年後に自分で家計簿をつけてみました。すると、「住宅ローンの返済」、「子どもの教育費」といった負担がなければ、退職した後の老後の日常生活費はおおよそ現役時代に比べて7~8割程度という結果でした。
ただし、これは日常生活費です。これに加えて趣味や楽しみのために使うお金、いわゆる自己実現費がありますし、家のリフォームや車の買い替え、子どもの結婚資金援助といった一時出費もあります。これらの費用は人さまざまです。お金のかかる趣味か、かからない趣味か? 子どもがいるのかいないのか? などなど、その人のライフプランや人生観によってまったく異なるので、一概には言えません。自分と家族でよく考えてどんな支出が考えられるかを把握しておくことが大切です。
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