報道とバラエティ番組の間
最近ずっと気になっていたことが表面化した事件が以下の2番組だ。それは、報道とバラエティの差がグレーすぎるということだ。これはテレビを観る人にも作る人にも問題がある。
ひとつは5月10日に放送された読売テレビの報道番組『かんさい情報ネットten.』で、若一光司さんが本番中に激怒。藤崎マーケットが街でさまざまなことをリサーチするという「迷ってナンボ!」のコーナーで、あるお店のお客さんが男性か女性かよくわからないという依頼を受け調査するという企画だった。
若一さんは「あのね、男性か女性かという聞き方、許しがたい人権感覚の欠如ですね。個人のセクシャリティにそういう形で踏み込むべきじゃないです。こんなもんよく平気で放送できるね。報道番組として、どういう感覚ですか。ちゃんと考えろよ」と。生放送中に局アナをはじめ誰も口を開くことはなく、スタジオは凍りついた。『探偵ナイトスクープ』なら良かったが、これは報道番組だったのだ。
番組スタッフは3日後に「街で出会った一般の方のプライバシー、人権への配慮を著しく欠いた不適切な放送をしてしまいました」とコメント。「皆さまに信頼していただける報道番組になれるように一から精進して参ります。本当に申し訳ありませんでした」などと結び、3秒間頭を下げた。
また番組責任者として、乾報道局長が「注意と配慮を欠き、このような結果となってしまったことを深く反省し、再発防止と信頼回復に今後努めて参ります。本当に申し訳ございませんでした」などとコメントし、番組の最後には一斉に10秒間頭を下げた。生放送では、不適切な表現やテロップのミスなどその場で謝罪して進行することが定例ではあるが、このように報道局長が10秒間も頭を下げるのは一大事であるといえる。
もうひとつは、6月22日に関西テレビ『胸いっぱいサミット!』が謝罪。5月18日放送での作家・岩井志麻子氏の韓国への差別発言に関してだ。「5月18日に『胸いっぱいサミット』で放送した国の外交姿勢を擬人化した発言につきまして、さまざまなご意見をいただいております」「当初、その発言には差別的な意図はないと考え、放送しました。しかしながら、その後、社内で議論した結果、視聴者の皆さまへの配慮が足りず、心情を傷つけてしまう可能性である表現であり、そのまま放送するという判断は誤りだったとの結論に至りました」と経緯を説明。「真摯に反省し、視聴者の皆さまにお詫び申し上げます」と謝罪した。
岩井氏は5月18日放送の同番組にパネリストとして出演し、韓国について「手首切るブスみたいなもん」などと発言。リストカットする女性にたとえたとも取れる内容が問題になり、関西テレビは謝罪したものだ。
気になるのは、生放送とはいえ編集されたVTRの取り扱い方は時間もかけて議論もできたことだ。収録後に編集もして、それをよしとして放送したものなので、突然起きてしまった「放送事故」とはいえない。「確信犯」ではないのだろうか?
口にチャック
そして、最後に4年前までお世話になった古巣の吉本興業の大問題。
会社を通さない営業(イベントや催事出演)を関西では「直(チョク)営業」と言い、関東ではこれを「闇(ヤミ)営業」と言う。この「闇」は「闇=反社」というところから来たものではないことは演芸業界用語としてお伝えしておきたい。
今回の問題は、オレオレ詐欺集団などの「闇」の稼業の人たちのパーティに「直(闇)で行った」ので、別々のものが混同されているとはいえるものの、ブラックはブラックである。ただ、ここはあまりにも生々しいし、また会社も現状把握の途中でもあるので私からのコメントは勘弁願いたい。