BTSは世界中の人々の価値観を変えている
もちろん、BTSがそういう姿勢で臨んでいても、周囲が彼らを同様に遇してくれるとは限らない。
2017年5月、彼らがBillboard Music Awardで初めてTop Social Artistを受賞した時は酷かった。「この変な髪型したアジア人たち、誰?」「最近はアワードも落ちたものだ」「厚化粧のエイジャンが、本物の有名人を蹴落として賞を取るなんて」「逆にアメリカ人が韓国の音楽賞をとることなんてないだろ? さっさと韓国に帰れ」といったレイシスト・コメントがSNS上で吹き荒れた。
でも防弾少年団は、そういった批判もやんわりと、しかし実力で押さえ込んできたように思える。
この動画を見て欲しい。朗らかだが、視野の狭い白人男性YouTuberによるリアクションビデオだ。
普段はヒップホップしか聴かないそうで、ジャンルが少しズレたスティーヴ・アオキすら知らないことが別のビデオで判明する。そんな彼が「最近流行るK-POPなるものを見てみむとてするなり」と防弾少年団「Not Today」を見てみるのだ。
冒頭のシーンで走るジョングクを見た彼は「こいつ本気で走ってる! “セール中だ”って感じだな」と発言する。これは、「アジア人/アジア系はケチで、安売りになっているものしか買わない」というステレオタイプに基づく、はっきりと差別的な言動だ。しかし、同MVの映像面に引き込まれた彼は、やがてラップ・モンスターを見て「君、なんて可愛いんだ……自分の性的傾向に疑問を持つようになってきた」とつぶやく。数分が過ぎる頃には「歌えて、踊れて、ストレートの俺をゲイに変えるほどプリティ」とBTSを絶賛するように。この男は、その後もBTSのリアクションビデオを作っていくことになる。
防弾少年団の魅力が文化的境界を飛び越える瞬間を目撃するのが好きで、彼らのMVに対するリアクションビデオを100本以上見てきたわたしが特にお勧めしたいのは、カリフォルニア州コンプトンの黒人青年YouTuberだ。
「DNA」や「Blood Sweat & Tears」でBTS入門した彼は、今ではほぼ完全にK-POP専門YouTuberになってしまい、「CLと結婚したい」などと発言している……。
BTSは「失敗」を糧に学び続けた
もちろん、BTSに粗相がないわけではない。
初期の彼らは、いわゆるティピカルなヒップホップ・アティテュードを追求していた節もあり、そういった傾向から、一部のリリック──「War of Hormone」の<女は最高の贈り物だ>や、「Can You Turn Off Your Phone」の<食事を目で食うのか? 女子みたいに>──が生まれたのだろう。
だが、人は生きて、学んで、成長していくもの。こうした詞に対する批判、それを受けての反省から生まれたのが女性たちへの応援ソング「21st Century Girls」だった。そういった成長が、やがてはアルバム『Love Yourself』シリーズに結実し、国連でのスピーチにまで到達したと言える。