誰の中にもある差別意識に気づく、名作「ドライビング・ミス・デイジー」のやさしさ

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 劇場へ足を運んだ観客と演じ手だけが共有することができる、その場限りのエンタテインメント、舞台。まったく同じものは二度とはないからこそ、ときに舞台では、ドラマや映画などの映像では踏み込めない大胆できわどい表現が可能です。

 高齢化が急激化する現代日本で、介護などの必要なく日常生活をすごせる「健康寿命」は、男性が約72歳、女性は約74歳 だと推計されています。そんな年齢をはるかに超えた、90歳近い高齢男性が運転する車が繁華街で暴走し母子が犠牲になった事件をきっかけに、高齢者の運転の是非が大きな話題になりました。

黒人差別が色濃い時代&地域

 現在上演中の舞台「ドライビング・ミス・デイジー」は、そんな高齢者による運転ミスから始まる25年間を描いた作品。自分では認めづらい老いによる衰えを見つめるとともに、いくつになっても人間は自分の望む方へ変化できる可能性を見出すことができる物語です。

 舞台は1948年、人種差別が色濃く残るアメリカ南部アトランタ。72歳のユダヤ人未亡人デイジー(草笛光子)は運転中に事故を起こしてしまい、母の身を案じた息子ブーリー(堀部圭亮)は初老の黒人ホーク(市村正親)を専用運転手として雇います。周囲からセレブ気取りと思われたくないこと、そしてホークが黒人であることからデイジーは嫌がりますが、飄々としてよく気がつくホークと過ごすうちに、不思議な絆が生まれていきます。

高齢者ドライバーに必要なのは講習ではなく試験ではないか

 先日、自宅の近所を車で移動している途中、片側2車線でコンクリート壁の中央分離帯がある道路を走っている時のことだった。 私は右車線を走っていたのだが…

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誰の中にもある差別意識に気づく、名作「ドライビング・ミス・デイジー」のやさしさの画像2 ウェジー 2019.05.17

 日常の買い物や墓参り、親族の住む隣州のモービルへのドライブなど、ホークが運転手を務めた四半世紀は、アトランタ出身であるキング牧師によるバスのボイコット呼びかけや、ケネディ大統領の就任とともに人種隔離法案が禁止されるなど、アトランタが公民権運動の中心地であった時代。デイジーはホークとのふれあいから自身が持っていた差別感情に気づき、それをなくそうと葛藤します。

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