誰の中にもある差別意識に気づく、名作「ドライビング・ミス・デイジー」のやさしさ

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 同作は、ドイツ系ユダヤ人でアトランタに育った劇作家アルフレッド・ウーリーが、自身や家族の個人的な体験をもとに、アトランタに住むユダヤ人の差別問題を取り上げた「ラスト・ナイト・オブ・バリフー」「パレード」と合わせた「アトランタ三部作」のひとつ。1987年にアメリカのオフブロードウェイで初演。当初5週間の上演予定が人気を博し、大規模な劇場へと移りながら約3年間ロングランされ、1988年にピューリツァー賞を受賞。1989年には映画化されアカデミー賞を受賞しています。初演でホークを演じたのは、当時はまだスターとはいえなかったモーガン・フリーマン。映画版でも同役を演じアカデミー助演男優賞にノミネートされ、大きなステップアップを果たしました。

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誰の中にもある差別意識に気づく、名作「ドライビング・ミス・デイジー」のやさしさの画像2 ウェジー 2018.01.04

 老齢のデイジーは元教師(既婚者であるデイジーに対し「ミス」と呼び掛けられるのは、職業婦人に対するアメリカ南部独特の表現だそう)で、プライドが高く気むずかしい女性。事故を起こしたのも加齢による自身の判断ミスからですが、車のメンテナンスが悪かったせいだと言い張ります。ホークに対しての拒絶は、自分で運転ができないほど衰えているとみなされてしまった悔しさとともに黒人への忌避感があるからですが、自身は差別主義者ではないと思っています。

差別する側も、差別されている。

 そんなデイジーが、ホークが字を読めないことを知って、ユダヤ教徒が祝わないはずのクリスマスのプレゼントにかこつけて字の書き方の本を贈ったり、停電の不安を彼の陽気さに救われたりする日常が淡々と描かれ、ともすればほのぼのした物語のようにも思えます。しかし同作は「老い」とともに、差別も大きなテーマです。

 モービルへの旅の途中、用足しのため車を停めたいというホークに、立ち寄ったばかりのガソリンスタンドでなぜいかなかったのかとデイジーは苛立ちますが、公共施設で黒人と白人が同じ場所を使えないのが当然の時代。「トイレに行っていいか聞かないといけないのはどんな気持ちがわかりませんか」とホークに指摘されまた怒りますが、それは自身が、ホークの尊厳を傷つけていることを察したから。

 一方、ユダヤ人であるデイジーは黒人を差別していますが、アメリカ社会全体のなかではユダヤ人もまた差別の対象です(映画版ではこの旅の途中、アイリッシュ系と思われる警官に尋問されふたりとも侮蔑的な言葉を言われる場面があり、差別の多重構造がより強調されています)。

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