誰の中にもある差別意識に気づく、名作「ドライビング・ミス・デイジー」のやさしさ

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 差別される初老の黒人ホークは哀れで健気にも思えますが、市村正親が演じるホークは、偏屈な老婦人の心を開かせたのも納得な、明るく魅力的な存在。出しゃばり過ぎず、それでいてブーリーとの会話からちゃっかり給料アップも引き出すような駆け引き上手な面もあります。デイジーの草笛は品と知性があふれ、今までの偏見や常識を疑ってキング牧師の演説に耳を傾けようとする意欲と、うまく行動に表せられない葛藤の深さを両立していました。

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誰の中にもある差別意識に気づく、名作「ドライビング・ミス・デイジー」のやさしさの画像1 ウェジー 2019.04.11

 ホークを雇ってから25年、デイジーは認知症を患い老人施設に入居。ホークももう運転ができなくなりましたが、月に1度ほど、デイジーを面会に訪れてきます。実の息子であるブーリーをスルーして、デイジーはホークに呼びかけます。「私の大事なお友だち」と――。

無意識の偏見を意識する

 現代日本において、専属の運転手を雇うという選択肢は現実的ではありません。しかし、老いへの向き合い方や、異文化や異なるバックボーンを持つひとへの無意識の偏見への対応は、時代や国を問わず普遍的なものです。それを正すことがどれだけ困難かは、残念なことにいまだに続く差別の連鎖が証明していますが、その努力がどれだけ尊いものかは、現代において浸透しているはず。

「ドライビング・ミス・デイジー」はそれを、声高にではなく静かにと描くからこそ染み入る魅力のある作品ですが、草笛の実年齢は85歳、市村は70歳。ともに出ずっぱりの熱演を目の当たりにすれば、「高齢者」の定義が少し揺らぐ……のも、やや否めないかもしれません。

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