
「Getty Images」より
7月21日の参議院選挙投票日を目前に、選挙カーによる騒音問題が今回もまた浮上し、ネットやメディアで議論が繰り広げられている。
11日にはタレントの吉木りさが、選挙カーの大音量で昼寝をしていた保育園児たちが起こされ、泣き出してしまうといった現状の報道に「逆効果でしかない。投票する気が失せる」と苦言を呈した。他にも「夜勤のある仕事だから本当につらい」「騒がしさで頭痛がする」など、騒音被害を訴える声がツイッターなどで数多く上がっている。
また、大音量で強引に有権者の注意を引きながら、発しているのは名前連呼だけ、という内容のなさにも、「意味がないからやめてほしい」と批判の声が上がっている。
選挙カー騒音はこれまでも選挙のたびに問題視されてきた。それでも取り立てて進展がないまま、日本では選挙の風物詩のようになっているが、筆者が10年以上暮らしたイタリアでは見かけたことがなかった。
選挙カーは海外にもあるのか。ないとすると、代わりにどんな方法で選挙運動が行われているのか。海外の選挙事情をアメリカやヨーロッパに住んでいる知人に尋ねてみた。
欧米に選挙カーはない。主流はインターネット、テレビ討論…
●アメリカ・ニューヨーク在住 ミュージシャン、西村京子さん(仮名、以下同)談
「ニューヨークでは、選挙カーは見たことがないですね。ソーシャルメディア、メール、SMSで直接メッセージを送ったりします。候補者を応援している人たちが、候補者の団体の指導のもと、地元で応援会みたいなものを設立したりもしています。『一緒にディベートを見ませんか』みたいなお誘いがあって、それが個人宅だったりするので驚き。『テレビが観られるバーで集まりましょう』みたいなものも。ディベートは面白い」
●イタリア・ミラノ在住のエンジニア、パオラ・アルビーニさん談
「選挙カーというのは見たことがないですね。30〜40年ぐらい前、イタリアでもまだ選挙集会とかやっていた頃は、集会のアナウンスをする車が走っていたことはあるけど……今ではもっと大きな広場で、もっと大規模な討論会が行われますが、拡声器付きの車でアナウンスしたり、名前を連呼するようなことはしませんね。ひと昔前までは選挙が近づくと、大型告知板にポスターが溢れかえるように重ね貼りされていたり、郵便受けにチラシやら党からの手紙が入っていたりしましたが、最近は紙媒体が減っています。ベルルスコーニの時代までは選挙戦はテレビが中心だったけれど、今はそれにFBやツイッターといったソーシャルネットワークが加わりました」
●フランス在住歴20年、現在オランダ・アムステルダム在住のメディア・コーディネーター、松川美樹さん談
「選挙カーなるものはないですね(笑)。あと、通勤客のラッシュアワーを狙って駅でビラ配りや演説するようなこともなく……そんな『駅ジャック』みたいなことをしたら逆に嫌われますし……。主に公共の広場などでチラシを配ったり、街頭演説をしたり、商店街をまわったりなど、ですね。最近ではソーシャルメディアもかなり利用しているようです。欧州では一般的に内容ありきだし、有権者たちが右派、左派、中道派とすごくはっきり分かれているから、候補者の演説に内容がなければまずNGです」
●スイス在住後、現在はドイツ・ベルリン在住のピアニスト、佐藤恭子さん談
「もちろん選挙カーなんてありませんし、あんなことしたら即、警察が来るでしょう。第一に、有権者は選挙カーを使うような迷惑な人には絶対投票しません。街に貼ってある選挙ポスターにも眉をひそめる人もいます。選挙活動はネット、テレビ討論などだと思います。毎度日本ではびっくりしますよね! 帰省中、元日から市会議員が大音響で演説し始めたので警察に電話したら、こっちが警察に迷惑がられたことがありました! 街もどこもかしこも音楽やら宣伝やらで騒音慣れしているから国民も平気なんですかね。政治家の民度が上がるといいですよね」