問題だらけの大学入試共通テスト・英語民間試験 制度不備が受験生を混乱に陥れる

【この記事のキーワード】

試験の扱いに足並みが揃わない大学

 上掲のように、英語民間試験には問題が山積みで、大学側もなかなか積極的な導入に踏み切れないでいるのが実情だ。

 文科省が5月31日に公表した国立大の英語民間試験活用予定によると、国立大では北海道大、東北大、京都工芸繊維大の3校は全学部で活用しない。また、国立大の4割に当たる35校は英語民間試験の成績を合否判定に使わないとしており、事実上、採用を見送っている。東北大学が「出願要件として英語認定試験の受検を一律に課すことや成績を合否判定に用いることには無理があり,逆に受験生の公平公正な扱いを損ねる恐れがある」とコメントしているように、制度の不完全さ、受験機会の公平性への懸念があるようだ。

 一方で、「成績を加点する」「一定以上の成績でマーク式を満点扱いにする」「民間試験とマーク式で高得点のほうを活用する」などの方法を取る大学もあり、民間試験がどの程度合否に影響するかは大学によってさまざま。今後も大学の判断により変更されることもあり得る。

生徒たちは新制度への移行を圧倒的にイヤだと思っている

 「生徒たちは新制度の試験、圧倒的にイヤだって思ってますよ」と語るのは、都内のある大手進学塾の塾長。共通テストを受ける一期生となる今の高2の生徒たちは、試験方法が変わるだけでもプレッシャーなのに、大学側の試験の扱いが定まらなかったり、TOEICが突然脱退したりすることに不安を感じているという。

 民間試験受験一期生となる、現高校2年生たちの声を拾ってみると、

「試験の種類とか、会場とか、複雑すぎて気が重くなる」

「センター試験に『書く、話す』試験を加えられなかったのかな? 7つの民間試験からどれを選ぶか考えるだけでアタマ痛い」

「試験結果が出願資格にしかならないのか、加点があるのかで、志望校選びも受験勉強の進め方も変わってくる。大学の動きにずっとアンテナ立ててなきゃいけなくて疲れる」

「さらに親にお金の負担をさせることになって心苦しい」

 制度の混迷ぶりと複雑さ、それによって物理的・経済的・精神的な負担を強いられることに大きな不安を抱えていることがわかる。

 大学入試は自らの将来をかけた真剣な挑戦の場。教育に変革は必要だが、受験生たちが制度の欠陥の犠牲になり、不合理な負担、不公平な競争を強いられるようなことがあってはならない。

 民間試験利用のために大学入試センターが発行する共通IDの申請は11月から始まる。新制度導入はもう目前だが、受験生たちが安心して試験を受けられるよう、今一度、議論と見直しが求められる。

1 2 3

「問題だらけの大学入試共通テスト・英語民間試験 制度不備が受験生を混乱に陥れる」のページです。などの最新ニュースは現代を思案するWezzy(ウェジー)で。