7月7日、FIFA女子ワールドカップで米国女子サッカー・チームが優勝した際、スタジアムでは観客が熱狂し、「男女平等賃金!」のシュプレヒ・コールが起こった。キャプテンのミーガン・ラピノーはLGBTQ活動家であるだけでなく、男女サッカー選手の賃金格差是正についてチームメイトとともに訴訟を起こしている最中だった。
翌日、福岡ソフトバンクスホークスのデニス・サファテ選手(米国ニューヨーク出身)がラピノーに対し、英語で以下のツイート行った。
「ヘイ、ラピノー。そんなにアメリカが嫌いなら出ていけよ! 誰もお前を止めないし」
Hey @mPinoe if you hate America so much, leave! No one will stop you.
このツイートに批判が殺到し、サファテは12日に英語での釈明ツイート3連投、日本語での釈明ツイート2連投(以下)を行なっている。
「意図せず、私のツイートが差別的だと感じられたのであれば謝罪します。私は、大好きな日本で、母国に誇りを持って働いており、そのどちらの国の悪口を言ったことはありません。代表チームの主将は、なおさらその国に敬意を持ってほしいと感じています。本当に米国も、国歌も国旗も嫌いなのであれば」
「米国以外にもプレーする場所はたくさんあるし、誰もそれを禁止しないよと伝えたかった。表現が攻撃的で不快に感じられたのであれば申し訳ありません。私は常に、ファンを愛し、誰に対しても敬意と誠実さを忘れずにいたいと思っています。」
トランプ、マイノリティ議員に「国に帰れ」
7月14日、トランプはアレクサンドラ・オカシオ-コルテスを含む4人のマイノリティ女性下院議員に「出身国に戻れ」とするツイートを3連投した。
「そもそも政府が完全に壊滅状態にあり、最悪で、最も腐敗し、無能な国々(政府が機能していれば、だが)からやってきた”先進的”な民主党女性下院議員たちが、地球上で最も偉大でパワフルな国である合衆国の民に政府はどう運営されるべきか、うるさく、意地悪く、語るのを見るのは見ものだ」
「完全に破滅し、犯罪だらけの出身国に戻り、政府を立て直すのを手伝ったらどうだ。それからアメリカに戻り、どうやったのか我々に見せてくれ」
「急いで戻らないと、あの国々は君たちの助けが本当に必要だ。ナンシー・ペロシ(下院議長)が無料の旅行手配を喜んでさっさとやってくれるぜ!」
「”先進的”な民主党女性下院議員」とは、以下の4人を指す。
・アレクサンドリア・オカシオ-コルテス(ニューヨーク州選出)
米領プエルトリコ系アメリカ人
・イルハン・オマール(ミネソタ州選出)
ソマリア系アメリカ人(ソマリア生まれ)
・ラシダ・トライブ(ミシガン州選出)
パレスチナ系アメリカ人
・アヤナ・プレスリー(マサチューセッツ州選出)
アフリカ系アメリカ人
全員、昨年の中間選挙で初当選し、先進的(プログレッシヴ)な意見、政策を共有する若手(20~40代)の民主党議員だ。中でもAOCと呼ばれるアレクサンドリア・オカシオ-コルテスがもっとも急進的かつ衆目も集めていることから、メディアは4人を「AOCスクワッド」(AOC分隊)と呼んでいる。
ナンシー・ペロシ下院議長も同じ民主党とはいえ、世代の違いもあり、4人との意見の食い違いが取り沙汰されている。トランプがペロシの名を皮肉として出しているのはそのためだ。
トランプの一連のツイートは現在、激しく批判されており、ペロシも批判のツイートを行なっている。米国は米国籍者しか政治家に立候補できず、4人とも米国籍者だ。うち3人は米国生まれであり、イルハン・オマールはソマリアからの元難民で、米国への移住後に米国市民権を取得している。オカシオ-コルテスは米領プエルトリコ系の両親から米国本土で生まれている。プエルトリコは米領であり、プエルトリコ生まれであっても米国籍者となる。ラシダ・トライブはパレスチナ移民の両親のもと、米国で生まれており、生まれながらの米国籍者だ。昔、米国に強制連行された奴隷を祖先に持つアフリカン・アメリカンのアヤナ・プレスリーは、祖先がアフリカの、現在のどの国に住んでいたかは到底分からない。
トランプは上記を承知の上でマイノリティ、移民や難民、その二世への揶揄としてツイートしている。理由は現在、紛糾している移民収容所問題だ。これについては後述するが、何れにせよ、常識では考えられない、あってはならない発言である。国が定めた立候補資格を有し、有権者に選ばれた議員を、国家元首である大統領が「出て行け」と罵ったのである。
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