
吉本興業ホールディングス株式会社公式ホームページより
お笑い芸人が反社会的組織への闇営業(事務所を通さない営業)をしていた問題は、そう簡単に収束しそうにない。無期限謹慎中の宮迫博之は、振り込め詐欺集団の忘年会で一曲歌い、100万円のギャラを得ていたという事実も明らかになった。当初、宮迫は「フライデー」(講談社)の直撃に「ギャラはもらってないよ」と答えており、その後も「入江におごってもらったからそういうこと(=反社組織が入江に渡した金で飲んだことになるということ)「間接的ではありますが、金銭を受領していた」等と、ウソをつき続けていたことになる。
吉本興業側も「報道されているような金額ではない」としていたが、結果的に週刊誌報道で反社組織側の人間が証言していたとおりの「100万円」という金額だったことを認めざるを得なくなった。田村亮もまた50万円のギャラを得ていたが「ノーギャラだった」と虚偽の説明をしていた。ウソにウソを重ねて身を守ろうとした宮迫と田村の芸能界復帰は、絶望的だろう。
ただし宮迫のような売れっ子芸人が自己保身でついたウソと、吉本興業の体質的な問題は、分けて考えなければならない。売れない芸人が闇営業によって生計を立てることを吉本興業は半ば容認しており、だからこそ振り込め詐欺集団の忘年会に出席した中堅以下芸人を擁護する声が芸人仲間から多く出ていた。
下積みのギャラは安くて当然、契約は結ばない
吉本興業ホールディングス株式会社の大崎洋会長はこの段階になってようやく、産経新聞・時事通信・ビジネスインサイダーなど様々なメディアのインタビューに応じ、各社の記事が発信されている。今回の事態を招いた原因や今後の対策などをトップ自らが矢面に立って、説明もとい釈明をしたわけだが、会長の認識には首を傾げざるを得ない部分が多かった。
まず、今回の問題が起きた原因のひとつとして、「所属タレント6000人に対し、マネジメントスタッフの数が少ないため、管理が行き届いていなかったこと」が挙げられているが、これに対して大崎会長は「そのような指摘をする人は吉本や業界について知らないだけ」と一蹴した。
しかし大崎会長こそ吉本や業界のことを「知らない」部分があるのではないか。大崎会長は今回の騒動で“初めて”闇営業という言葉を知ったというが、謹慎処分となった芸人たちを擁護する芸人らは、「みんなやっていることだ」と口をそろえていた。そのうえバラエティー番組などで頻繁に芸人が「闇営業」をネタにしてきたにもかかわらず、会長がこの事件により「初めて知った」というのはおかしいのではないだろうか。
また、所属タレントを6000人も抱えている理由について大崎会長は、芸人を志す人は不良であったり就職口が無かったりなど社会に順応する能力が低い傾向があるため、そういう人達の気持ちを無碍にすることはできず、来るもの拒まずの姿勢を貫いた結果だと話している。しかし「社会に順応する能力が低い傾向」があるのだとしたら、なおのこと事務所の放任姿勢は大きな問題だったのではないか。
芸人たちのギャラが安いのではないか、という批判についても大崎会長は、「吉本としては基本、ギャラはちゃんと払っている」「修行、下積み時代はバイトをして芸を磨けばいい」と主張。
<吉本の芸人としてデビューしたんだから、だれも笑ってくれなくても、月に30万円払ってやるからがんばれよ、というやり方は、本当の芸人を育てるやり方とは思えない。吉本のいまのやり方を、変えるつもりはありません。>(ビジネス・インサイダージャパンより)
また、会社と芸人の取り分が「9:1」という話は芸人がネタとしておもしろおかしく話しているだけだと否定した。
そして芸人との契約書を交わしていない(口頭のみ)という最大の問題については、「法律上問題はないため今後もその方針を変えるつもりはない」という。
しかしその方針に、芸人たちは納得しているのだろうか。7月15日放送の『スッキリ』(日本テレビ系)で吉本所属の近藤春菜(ハリセンボン)は、「口頭だったとしても、芸人も納得してお互い同意しないと契約って結ばれないと思うんですよね。私は吉本から口頭でも聞いた覚えはないです」とコメント。さらに、「会長のおっしゃっていることと芸人の間での相違がすごくて、これで納得している芸人っていないと思います」と大崎会長への不信感を語っていた。
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