能年玲奈という本名を奪われた「のん」は、元SMAPの独立組メンバーと同じく、民放テレビ局から閉め出されるという憂き目にあっている。彼女がNHK朝ドラ『あまちゃん』で大ブレイクした当時に所属していた事務所・レプロプロダクションは、バーニング直系の芸能プロだ。だが彼女はレプロとのトラブルにより独立を希望。すると、バーニングの子飼いメディアである「女性セブン」や「週刊ポスト」(ともに小学館)といった週刊誌によって「年上の女性に洗脳されている」と書き立てられた。
結果的に彼女はレプロから離れて独立することになるのだが、その際、これまで世間に認知されてきた「能年玲奈」という名前を捨て、「のん」という芸名で再スタートを切ることになる。「能年玲奈」は芸名ではなく本名であるにも関わらず、彼女は自分自身の名前を使って仕事をすることができなくなったのである。
それだけではない。彼女はのんとしてアニメ映画『この世界の片隅に』で主演声優を務めたが、在京キー局から締め出されて映画公開のプロモーションを行うことができなかった。そのような締め出しは過去の資料映像にもおよぶ。テレビ番組において『あまちゃん』の資料映像を使う際には、彼女の出演シーンをカットして使用する対応が繰り返されたのだ。
そういった事態を受けて、『あまちゃん』の脚本を担当した宮藤官九郎は「週刊文春」(文藝春秋)16年7月7日掲載の連載コラムで〈そう言えばトーク番組で『あまちゃん』の話題になり懐かしい映像が流れたのですが、映像使用の許諾が取れなかったのか、アキ(能年玲奈さん)がワンカットも映ってなかった。代わりに前髪クネ男(勝地涼くん)がガッツリ映ってて笑った。あまちゃんは能年さんの主演作ですよ、念のため〉と、芸能界における異常な状況を告発したこともあった。
口コミを中心に爆発的な広がりを見せた『この世界の片隅に』は、興業・評論、どちらの面でも大きな成功をおさめた。しかし現在でものんは、LINEをはじめとしたテレビCMには出られても、地上波のテレビ番組には出演していない。彼女をテレビドラマで起用する局はどこにもないのだ。
のんだけではない。他にも、北野誠、小林幸子、鈴木亜美(鈴木あみ)、水野美紀など、バーニングとのトラブルや独立が原因で芸能活動に支障をきたすことになった芸能人は数多い。
まったく同じような構図で芸能界および芸能メディアに不公平を生んできたジャニーズ事務所に対して公取委から注意が入った以上、バーニングに対しても同様の注意が入る可能性はある。いや、そうなって然るべきだろう。
長い間、問題を指摘され続けてきた「ジャニーズタブー」「バーニングタブー」がついに崩れる日が来るのかもしれない。
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