ひきこもりを強引に連れ出す「引き出し屋」は“支援”とは呼べない。ひきこもり支援の課題とは

【この記事のキーワード】

引き出し屋は“支援”ではなく“指導” 

――記事の前編では、ひきこもりは「傷つけられた人」であり、ひきこもることに費やすエネルギーを生きていくためのエネルギーに変えていくことが大切とのお話がありました。しかし、ひきこもりの方々を無理やり外の世界に引っ張り出す、通称「引き出し屋」が数年前から問題視されていますよね。

深谷:実際に「ひきこもり」とインターネットで検索すると、上位に「引き出し屋」と呼ばれるような施設・団体のサイトが出てきたりもします。ひきこもりは本人だけでなく、家族もひきこもりを抱え込んでしまいがちです。地域社会から孤立した家庭の中では、家族はどんどん疲弊し、身体的にも経済的にも先が見えなくなってしまう。そうなった時に「ひきこもりを解決する方法があるのなら」と、多少高いお金を払ってでも引き出し屋に連絡してしまうことがあります。

――藁にもすがる思いで「引き出し屋」に依頼してしまうのですね。

深谷:私もこういう施設・団体に無理やり連れ去られた方々からお話しを伺うことがあります。お話しを伺う限りでは、こういう施設は、ひきこもりの方々が人間関係を遮断せざるを得ない状態で傷ついているということを理解しているとは思えないのです。根底には「ひきこもりは悪いことであり、“矯正”させなくてはいけない」という考えがあるように思います。「集団生活を通じて規則正しい生活を」と謳っていますが、本人の意向を無視した押しつけや強制が行われているようです。 施設のサイトには”支援”という言葉を掲げていますが、実際には“指導・強要”です。

人間関係の傷が癒えていない状態、人との関わりに強い恐れを抱いている状態で無理やり家からひき出し、施設スタッフからの指導を強要させたり、就労支援という名の労働をさせたりすることは却って本人を追い込んでいく可能性が高い。

――「却って本人を追い込んでいく」とはどういうことでしょうか。

深谷:ひきこもりは「自ら人間関係を遮断せざるを得ない」程に傷つき、人との関わりに不安を抱えています。従って「なんとかさせようとする」ことに、激しい抵抗を示すことが多いのです。抵抗感を持つような環境でスタッフと信頼関係を構築し、関係性の回復に至るとは思えません。事実、こういった施設から逃げ出した方々は、更に傷つきPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症している方もいます。

それに「引き出し屋」は、家族に非常に法外な料金を請求します。逆を言えば、家族のお金が尽きれば施設を放り出されるのです。引き出される前よりももっと酷く傷ついて家族の元に返されます。当然、家族との関係性そのものが破綻してしまうのです。

――もっと傷ついた状態で追い出されるとは、酷いですね……。

深谷:「働かざるもの食うべからず」として「就労をゴール」にして、とにかく働かせようと本人を追い込む。ひきこもり本人の多くは「仕事をすることは苦ではない」という人が多いんです。しかし、人間関係に不安や恐れが強いですから「昼休みが辛い」ということで仕事を辞めてしまった方もいます。会社の人と雑談をすることそのものが苦手だったりもしますし、「昔は何をしていたの?」といった質問をされても、なかなか「ひきこもっていた」とは言い難い。そういう関係性に疲れ果てて働けなくなってしまったりするのです。

人間関係の回復のステップを踏まずに、自己肯定感や自尊感情の損なわれたままの状態で就労しても、より深い傷を負ってしまい再度ひきこもってしまうケースは少なくありません。そのため、私は「引き出し屋」の“指導”がひきこもりの回復に適しているとは思えないのです。

1 2 3

「ひきこもりを強引に連れ出す「引き出し屋」は“支援”とは呼べない。ひきこもり支援の課題とは」のページです。などの最新ニュースは現代を思案するWezzy(ウェジー)で。