「人生100年時代」は本当か 「100年生きる」喧伝で得する業界

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「長く働きたい」と思わされている?

 他にも「人生100年時代」を謳いたい人たちがいそうだ。100歳まで生きるとなれば、多くの人は漠然と、元気でいられる年齢も延びると思い込んでしまう(現実には寝たきりの長い人生が待っている可能性もあるが)。そうなると、より長く働きたい、あるいは働かねばならないなどと思い始めるだろう。

 より高齢になっても働き続けるということは、より高齢になっても収入に見合った税金を収めなければならないということだ。

 同時に、より高齢になるまで年金を受け取らなくてもよい、あるいは受け取れないということになる。思えば、「人生100年時代」ブームの発端は、リンダ・グラットンとアンドリュー・スコットの共著(邦訳は池村千秋)の『LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略』だと言われている。

 同書では、寿命が延びれば、これまでの「教育→仕事→引退」という3ステージで人生を区切る考え方を変えなければならない、と主張する。このブームに政府が便乗したようにも見える。なぜなら、政府は同書のタイトルそっくりの「人生100年時代構想会議」を立ち上げ、委員の一人に著者のリンダ・グラットン教授まで招聘するという念の入れようだからだ。

そもそも100年も生きられない

 ところで前述の『LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略』のタイトルだけ見ると、おそらくこの本の読者層の中心である現役のビジネスパーソンたちが100歳まで生きられるかのような錯覚を起こしそうだ。しかし本書には以下のように書かれている。

 “2007年にアメリカやカナダ、イタリア、フランスで生まれた子どもの50%は、少なくとも104歳まで生きる見通しだ。日本の子どもにいたっては、なんと107歳まで生きる確率が50%である。”

 つまり、「人生100年時代」は、2019年現在で12歳の子どもの話なのだ。現役で働いている20代~60代の私たちのことではない。しかし、前述した保険業界、住宅の建築・販売業界、資産運用業界、そして政府は、あたかも現役世代が100年生きるかのようにミスリードしていないだろうか。そもそも、人には生命としての限界もある。

 生物学者の池田清彦氏(早稲田大学名誉教授、山梨大学名誉教授、東京都立大学理学博士)によれば、種ごとに生物学的な寿命が決まっているという。

 人はおおよそ115歳が限界だという。実際には115歳以上生きた人が存在するが、全世界で50人未満だ。つまり約76億分の50だ。そして池田氏は、「最大寿命が115歳で、平均寿命が100歳ということは確率的に無理」だと語っている。(MAG2MEWS:2019/1/30)

 私たちは、自分が100歳まで生きるという前提で暮らさなくても良いのではないか。「人生100年時代」という標語には、注意したほうがいい。

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