『トイ・ストーリー』シリーズのアップデートにみる、価値観の変容と表現の在り方

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 最新作『トイ・ストーリー4』では、イメージが定着しきっているボー・ピープのキャラクターを変更するのではなく、新たに“クールな女性キャラクター”を登場させることも可能であったはずである。しかし、あくまで既存キャラクターの変化という点にこだわったことで、価値観を更新させることや、既成概念を覆すことを肯定する姿勢を見せた。ひいては観客自身に“自分も変われるかもしれない”と感じさせ、背中を押すことこそが、本作に込められた表現者たちの意図だったのではないだろうか。

 ただし、1995年に第一作が公開して以降、世界中の子どもから大人までを虜にしてきた『トイ・ストーリー』シリーズには、特別な思い入れのあるファンも多いだろう。それだけに、最新作に見られる大幅なアップデートにも、やはり「これまで慣れ親しんで来たトイ・ストーリーと違う」「トイ・ストーリーの全てを否定されたような気分だ」「ポリコレを意識しすぎ」といった不満の声も多く、ネット上の評価は賛否両論に分かれている。

 近年のめまぐるしい価値観の変容は、文化の場でも多くの議論を生み出している。しかし、『トイ・ストーリー』がシリーズを通して表現の革新を見せたように、文化の発信者の立場にいる者も、文化を享受する立場にいる者も、私たち一人ひとりが意見を交わしながら価値観の更新を図ることで、未だ答えの出ない社会の新機軸を築くきっかけとなるだろう。

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