
スクワッドへのヘイトに対抗し、応援するTシャツ。
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7月半ば、トランプは4人の民主党マイノリティ女性下院議員に「国に帰れ」とツイートした。通称”スクワッド”と呼ばれる4人は先進的な政策を提唱し、遠慮のないトランプ批判も行うからだ。トランプの人種差別、宗教差別、および女性差別の言動は今に始まったことではないが、今回は「大統領から国会議員への差別」であることから激しく非難されている。そもそも4人は米国人(※)であり、”帰る国”があるとすれば、それはアメリカだ。
※3人は米国生まれ、1人は元ソマリア難民で現在は米国市民
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歯止めの効かないトランプと支持者
有権者の投票によって選ばれた国会議員に大統領が「出て行け」とは、まさに国政の根幹を揺るがす許しがたい発言だ。立場上、常にトランプを擁護する共和党の議員たちも、今回はしどろもどろになっている。
ミッチ・マコーネル上院院内総務の妻、エレイン・チャオは運輸長官だ。子供の頃に台湾からアメリカに移住し、大成した人物と言える。マコーネルは、もし妻が誰かから「国へ帰れ」と言われたらどう思うかと記者に質問され、なんとも歯切れの悪い答えを返した。「長官は8歳で合法移民として英語も話せずに渡米したが(中略)まさにアメリカン・ドリームだ」と、妻と移民を称揚しつつ、それでもトランプ発言への批判はしなかった。
「国へ帰れ」のツイートから3日後、トランプはノース・カロライナ州で自身の大統領再選に向けた集会を開いた。その際の演説でもスクワッド、中でもイルハン・オマール議員を批判した。すると会場のトランプ支持者が「(オマール議員をソマリアに)送り返せ! 送り返せ!」と繰り返した。トランプは支持者を止めようとはしなかった。
翌日、ホワイトハウスでのイベント時にトランプは記者から「なぜ支持者を止めなかったか」と質問され、「止めようとした」「すぐに話し始めることで制止した」と明らかな嘘を付いた。実際は支持者が叫ぶのを聞いていただけなのは、映像を見れば分かる。さらには「オマール議員はアメリカに居られてラッキーだ」とすら付け加えた。
この件について記者から意見を求められた共和党の大物議員で、大統領選に出馬したこともあるリンジー・グラハムは、「ソマリア難民がMAGA帽(※)をかぶっていれば、大統領は彼女を送り返したりはしないだろう。おそらくホワイトハウスのディナーに招待されるだろう」と、まるで支離滅裂な回答をしている。
「送り返せ!」の後、民主党はオマール議員の身の安全を案じ、警備の追加を申請している。
※トランプのキャッチフレーズ「メイク・アメリカ・グレイト・アゲイン」が書かれた帽子
トランプ自身は批判されればされるほど意固地になり、スクワッドへの攻撃ツイートを続けている。
「4人の女性上院議員が国を愛しているとは思えない」「アメリカに謝罪するべきだ」「スクワッドは大変なレイシスト・グループだ。若く、無経験で、賢明ではないトラブルメイカーだ」
「若い」以外はそのまま全てトランプ自身に当てはまる言葉である。
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