電機・エレクトロニクス業界において変貌を遂げてきた企業を紹介するシリーズ。今回は「京セラ」。
京セラは電子部品から電子機器まで幅広く手がける日本を代表するエレクトロニクスメーカーである。電子部品は水晶デバイス、液晶、半導体など幅広く、電子機器もプリンタ、スマホ、電動工具など多方面に及ぶ。
幅広い分野で、いずれも高い技術を持つ超優良企業である。その京セラの成長においては、M&A(企業買収)が切っても切り離せない。
具体的な名指しは避けるが、近年、手当たり次第に買収して方向性を逆に失い、失敗している新興企業が目につく。京セラのM&Aはこうした企業にとっても手本になるものである。そのいくつかの事例を挙げたい。
ドキュメントソリューションの源流は三田工業
京セラの全体売上高の2割余りを占めているのは「ドキュメントソリューション」である。その中身は、モノクロ・カラープリンタ、複合機、ソリューションビジネス、ソフトウェア、関連サプライ製品の製造・販売などとなっている。
これらを手がけているのは、大阪市中央区に本社を置く京セラの子会社、京セラドキュメントソリューションズという会社である。そして同社の前身は、今ではその社名でピンと来る人のほうが少ないかもしれないが、三田工業という会社だ。
三田工業1948年に設立され、テレビコマーシャルなども頻繁に行って知名度も高かったが、経営が行き詰まり、1998年8月に会社更生法を申した。その際にスポンサーとして登場したのが京セラだった。
三田工業は2000年1月に京セラの100%子会社「京セラミタ」となり再出発。さらに京セラ本体のプリンタ事業を統合して、2012年に京セラドキュメントソリューションズとなり、グループの情報機器事業を担う位置づけとなって今日に至る。
ちなみに三田工業が行き詰まり、京セラミタとなった時点での同社の売上高規模はおよそ年間で1200億円余り。この時点で京セラ本体のプリンタ事業はおよそ540億円、グループ会社を含めてもおよそ600億円だったから、三田工業は京セラのプリンタ事業の倍以上の規模があったことになる。旧三田工業はさらにここから発展し、現在の京セラドキュメントソリューションズは売上高を3750億円にまでのばしている(19年3月期)。
買収を契機に、事務機器などドキュメントソリューション事業を大きく育てたといっていいだろう。
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