
かっぱ寿司(「Wikipedia」より)
全国に523店舗を展開する、回転すしチェーン最大手の「スシロー」(2019年7月時点)。サービス産業生産性協議会が6月に発表した「2019年度JCSI(日本版顧客満足度指数)第1回調査」においても、スシローは飲食業種(レストランチェーンとファストフード店の24企業・ブランドが対象)の「顧客満足」スコアで長崎ちゃんぽんの「リンガーハット」に次ぐ2位につけ、その人気ぶりが証明された。
スシローが業界のトップを奪取したのは2011年のこと。それまでは「かっぱ寿司」が首位に立って業界をリードしていた。しかし、かっぱ寿司は現在、競合の「くら寿司」と「はま寿司」にもリードを許し、業界4位に転落してしまった。
ただし、かっぱ寿司もこの状況に甘んじているわけではない。かっぱ寿司を運営するカッパ・クリエイトの2018度の既存店売上高は、前年同期比0.1%増を記録。2017年度は同1.7%減、2016年度は同4.2%減……と、散々な結果が続いていたかっぱ寿司にとって、この数字がプラスになったのは、じつに7年ぶりの快挙なのだ。
そう、かつての王者であったかっぱ寿司は、ようやく復調の兆しを見せているのだ。そこにはどのような理由があるのだろうか。回転寿司評論家であり、『回転寿司の経営学』(東洋経済新報社)などの著書を持つ米川伸生氏に話を聞いた。

米川 伸生(よねかわ・のぶお)/回転寿司評論家
幼少時から回転寿司の魅力にとりつかれ、2007年には『TVチャンピオン2』(テレビ東京系)の「回転寿司通選手権」で優勝。回転寿司のスポークスマンとして各メディアで精力的に発信しているほか、回転寿司店のコンサルティングなども行っている。
Twitter@sushiyone
その昔、かっぱ寿司のネタの鮮度はどこよりも劣っていた
かっぱ寿司といえば、2017年には回転寿司としては珍しい「食べ放題」を導入するなど、世間に話題を振りまくことも多かった記憶があるが……なぜ、今まで業績が低迷していたのだろうか。
「かっぱ寿司の凋落が始まったタイミングは、競合であるスシローの台頭と、ちょうど重なっています。7~8年前、スシローは“原価率50%”を前面に押し出したテレビCMを打つなど、巧みなメディア戦略を取っていました。
一方のかっぱ寿司も、宇宙人が登場するような面白いテレビCMを流してはいたのですが、あくまでもイメージCMに過ぎなかったかっぱ寿司と、『ウチは本格的で鮮度の良いネタを使っています』としっかり主張していたスシローとでは、その広告効果にも顕著な違いがあったといえるでしょう。
それに、当時のかっぱ寿司の原価率は38%程度でしたから、実際に食べ比べてみた客も、やはりかっぱ寿司よりスシローのネタの方がおいしい、と感じていたはずです。一時期、ネット上では『かっぱ寿司のまぐろは、向こうが透けて見えるほど薄い』とまで揶揄されていましたし、原価率38%と50%の差は如実に表れていたということですね。
とはいえかっぱ寿司も、2014年にフードサービス企業のコロワイドに買収された際、すぐに原価率を50%近くまで上げました。しかしその頃、スシローやくら寿司はすでにさらなる進化を遂げていましたので、もうかっぱ寿司は客足が遠のいてしまった状況だったのです」(米川氏)