どのチェーンも寿司の品質は横並び…勝負を分けるのは?
米川氏いわく、かっぱ寿司はQSCの強化とメディア戦略の改善によって新規の客をつかみながら、リピーターを増やすためのアプローチも両立させているという。
「これはスシローを追従した戦略だと思われますが、かっぱ寿司は近頃、コラボ企画にものすごく力を入れています。例えばサイドメニューに『本格ラーメンシリーズ』というものがあり、『えびそば一幻』(北海道札幌市/本店、以下同)や『長尾中華そば』(青森県青森市)といった、全国各地の名店とタッグを組んできました。スシローの類似企画と比較すると、かっぱ寿司のコラボはより“深度”が増しており、『せっかくやるなら、そのジャンルの専門店らしく』という意図が見て取れるのです。
さらにかっぱ寿司の場合、外食をメイン事業に複数の居酒屋を経営するコロワイドがバックについていますから、食材のレパートリーや調達力は、競合よりも段違いに勝っています。そうしたメリットを活かしてコラボ企画やフェアを開催することで、かっぱ寿司は『今度こういうメニューが出るならまた来よう』というコアなファンを、着実に獲得しつつあるわけですね」(米川氏)
そして現在、かっぱ寿司は肝心な寿司の味についても、競合と遜色のないレベルにまで引き上げているようだ。
「回転寿司チェーンには100円の商品もありますが、店側が本当にこだわっているのは、150円や200円するような“生ネタ”です。スシローやくら寿司は率先して生ネタを取り入れていましたが、かつてのかっぱ寿司は効率面を優先し、セントラルキッチン方式であらかじめ切られたパック詰めのネタを、店舗で握って提供しているだけでした。
しかし現在は、かっぱ寿司も店舗で切ったばかりの新鮮な生ネタを扱えるようになっています。コロワイドのノウハウを借りて、食材の原価や調理機材といった諸問題をクリアすることができたからです。
なので、もはや回転寿司チェーンはネタの鮮度や味にほとんど差がつかなくなっているといえるでしょう。人々に“安かろう悪かろう”と思われていたかっぱ寿司は、店舗や人材の体制が整ってくるにつれて、すでに過去の話になっているのです」(米川氏)
もっとも、カッパ・クリエイトの既存店売上高が787億円(2018年3月期)なのに対し、スシローを手がけるスシローグローバルホールディングスは1748億円(2018年9月期)と、ダブルスコア以上の開きがある。かっぱ寿司の復権へのハードルはまだまだ高いだろう。
また、米川氏は「味で差別化するのが難しくなってきた以上、どこのチェーンも独自の戦略を考えようとしていますが、ひとつの店が何か新しく始めたら他店もマネするというのがこの業界です」とも語る。今後のかっぱ寿司の命運は、自社にしかない強みをいかに作り出せるかにかかっているのかもしれない。
(文=森井隆二郎/A4studio)