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最長2年の失業手当と高い労働権利意識。フランスの社会保険制度運用は成功しているのか?

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「Getty Images」より

 さまざまな面で遅れている日本の社会保障制度。改善のためにも福祉先進国の欧州に学べという意見は少なくない。つい最近も、「フランスの失業手当は手厚い! 日本も学べ!」なるツイートが多くの反響を呼んだ。

 失業手当の額は個別のケースで異なるため、すべての失業者が毎月49万円もらえるわけではないだろう。とはいえ、フランスの失業手当が日本や他の欧州国と比べて手厚く、労働者にやさしい保障であることは間違いない。それは多くの専門家や研究者が指摘するところだ。

 では、フランスの失業保険制度を日本に導入、またはその制度に学ぶ形で改善を加えたら、果たして上手く機能するのだろうか? そもそもフランスはその社会保険制度の運用に成功しているのか? 同国では、若者失業率や財政赤字の問題を抱え、反政府デモも起きている。失業手当の見直しはフランス議会で幾たびと取り上げられ、大統領選挙の争点として浮上したこともある。多くの国民が納得する政策であれば、この現象はあり得ない。

 比較するからには、お国柄の違いやその国特有の事情、あるいは財源や税率、失業率などの面からも考察を加えなければ、「木を見て森を見ない」議論になりかねない。

失業保険。日本とフランスの違い

 欧州一といわれるフランスの失業保険制度。まず特筆されるのは、受給期間の長さだ。同国では、失業手当を最長2年受給できる。50歳以上だと3年(※解雇理由などによる)。最長1年未満の日本と比べたらその差は歴然だ。

 受給期間中に減額されることはなく、最後まで同じ水準の支給を受けられる点も、他国では見られない特徴だ。また、受給期間中に職を得られなくても、その後の失業状態が長引く人には「連帯失業手当」が受けられる場合もある。さらに当該受給者が再就職を決めた際には、「雇用復帰特別手当(日本における再就職支援手当)」が支給される。このように幾重にも手当が用意されているから、フランスの失業者は解雇されてもすぐに生活の心配をしなくて済むし、次の職も焦らず決めることができる。

 日本の場合、受給期間はフランスと比べると短く(90~360日)、受給資格の条件も厳しい。どれくらい給付が受けられるかの所定給付日数に関する規定も細かい。総受給額に至ってはほとんど比較にならないだろう。

 日本では、保険加入期間が1年未満の場合は失業手当を受給できない。倒産・解雇等以外の離職ケースでは、1年以上10年未満の加入で90日の給付、10年以上20年未満で120日、20年以上で150日と段階的に延びる仕組み。ちなみに360日給付が受けられるケースは、体に障がいを持ち、なおかつ45歳以上65歳未満の人の場合。やむを得ぬ事情で職を見つけることが厳しい場合に限られるわけだ。4カ月の保険加入で24カ月受給できるフランスとの差は、やはり甚だしい。

 日本の雇用保険は、あくまで次の職を見つけるまでの救済措置という意味合いが大きい。受給資格は、「就職しようとする積極的な意思があること」「就職できる能力があるにもかかわらず、職業に就くことができない状態にあること」が条件となっている。その意思を示すために、失業者は所定の日にハローワークに出向いて就職活動の経過報告をしなければならない。

 求職活動の報告義務は、フランスでも同様に課せられる。フランスのハローワークにあたるのが「雇用局」で、再就職活動は同局策定の就職計画に沿って進めるのが原則だ。日本と同様、職業訓練や面接のあっせんもあり、これを怠ると給付は打ち切られる。働く意思のない人間に支援はしないというスタンスは、日本もフランスも変わらない。

 見てきた通り、フランスでは偏りすぎと思われるくらい失業者へのフォローが厚い。しかし、この行き過ぎた失業給付が自国の首を絞める「両刃の剣」になっている点も見逃せない。

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