最長2年の失業手当と高い労働権利意識。フランスの社会保険制度運用は成功しているのか?

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手厚い失業手当が招く問題とは?

 これだけ高額支給を可能にしているわけだから、フランスの保険料や税負担が大きいのは言うまでもない。しかしそれ以上に大きいのは、失業保険の制度基盤を支える仕組みが特殊なことにある。

 フランスの失業保険制度は、労使の共同管理で成り立っている。協定内容を政府が承認し、すべての民間会社に適用を義務づけている。保険料は制度発足当初は使用者と労働者の共同負担だったが、徐々に労働者負担が引き下げられ、現在は全額企業負担。その一方で一般福祉税が引き上げとなり、失業保険制度の財源の一部に組み込まれることになった。

 給付額の上限についての取り決めを行う際、労働組合の意見は無視できない。労使協定という構造にはそのような側面がある。フランスにおける全国的な労働組合は全部で5つ。失業給付に上限を課そうとする動きが見られれば、労働組合から即座に横やりが入る。いかに労働組合の立場が強いかは、これまで労働者負担が順次引き下げられてきた経緯を見ても分かるだろう。

 しかし、労働者の声を一方的に吸い上げるだけでは財政は持たず、いずれ破綻する。マクロン政権が喫緊の課題として労働法改革の推進を掲げているのは、膨れ上がる社会保障費を是正するためである。フランスのフィリップ首相は6月13日、高所得者の失業給付減額の必要性を訴えるとともに、異常に高い失業手当を減額する方針を表明した。失業者の中には、サラリーより高い手当をもらっている人も少なくない。これでは就業者から不満の声が上がるのは当然だ。

 さらにフランスが長年抱える高失業率の問題も、労働者に寛大なセーフティネットと密接に関わり合う。フランスではリーマンショック以降に景気が悪化し、失業率が高止まりの傾向。2018年度のフランスにおける平均失業率は9.1%で、ドイツやイギリス、オランダなどEU主要国と比べて高い水準にある。特に深刻なのが若年層の失業率で、リーマンショック以降はおおむね20%台で推移している。

 若い世代は雇用期間の定めがない有期雇用の割合が高く、雇用が不安定な情勢だ。新たに人を雇えばそれだけ高い賃金や社会保険料の負担が科せられるため、企業は及び腰になりやすい。さらにフランスの労働法には、一度雇用すれば容易に解雇できない、有期雇用者であっても待遇は無期限雇用者と同等にしなければならないなど、さまざまな制約がある。これは労働者保護の意識が強い表れだが、皮肉にもそれが若者の労働市場への新規参入を阻害するファクターとなっているのだ。

 昨年末、「黄色いベスト」運動と呼ばれる反政府デモがフランス全土を席巻した。ガソリン税の引き上げや年金・失業保険制度、教育改革など、彼らが掲げた政治的イシューは多様だが、この運動の中心となったのは25歳から34歳までの若年労働者。若者の間でたまった不満が大きなうねりとなって大々的なデモを引き起こしたのである。

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