ろう学校で受けた暴力と暴言、そして性被害

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殴らないおとなは、みんな「いい人」

 中学2年生のときだった。

 そんなMに、手を差しのべてきたおとながいる。酒田と名乗り、Mのろう学校と寄宿舎を共同で使っていた、盲学校の高等部に通う生徒だった。脳の障がいから、目にも異常があるのだと言う。

「カレは40代半ばで、ちょうど父と同じぐらいの歳でした。盲学校って、夜間学校みたいに年上の生徒も多かったんですよ。おとなになってから視覚障がい者になった人が、今後の職業として針きゅうやマッサージを習いに来るんです。ろう学校は、あまりそういうのがなくて、普通の中学と同じく10代の子がほとんどでしたけど」

 酒田はやさしいおとなだった。周囲の子どもたちの話をただひたすらに聞き、穏やかにほほ笑んでいる。ろう学校と盲学校の生徒は、食堂を共同で使っており、夜の自由時間にも親睦を深めることが可能だった。Mは出会ったばかりの酒田をすぐに慕うようになる。

「父や母、そして先生のようにボクを怒鳴らないし、殴らなかったんです。それだけで、いい人なんだって思っちゃいました。この人ならボクを大切にしてくれるって。アクセサリーやおもちゃも買ってくれるし、とにかく甘かったんですよ」

 いわく、「新興宗教の教祖のように人を引き付けるチカラがあった」らしい。心からハマってしまったMは、酒田の奴隷となっていく。

制服をはだけた「自撮り写真」を求められ

 知り合って数カ月たったころ。脳の障がいが進行した酒田は、しばらくの間入院することになった。すると、病院から携帯電話のショートメッセージでMの「自撮り」写真を要求してきたのだ。最初は「顔だけ」だったはずが、徐々に「肌が見えるものがいい」など露出を求めるようになる。

 Mは自分を「男の子」だと思っている。それを酒田も知っているはずだ。だから、まるで女子みたいなことを求めてくる酒田に苛立ちはあった。

 しかし「イヤだ」と抵抗しても、「そんなことを言うMちゃんは嫌いになっちゃうよ」などと返されれば、嫌われたくない、捨てられたくないと、つい従ってしまう。「露出の多い服なんて持ってない」と伝えると、「制服のボタンを外すだけでもいいから」と指示された。これでまた酒田さんがほめてくれるなら……。沈む心を押し殺してブラウスのボタンを外し、胸元を少しだけはだけさせた写真を送った。

<つづく>

 

<翼さんのインタビュー第一回はこちらから読めます>

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ろう学校で受けた暴力と暴言、そして性被害の画像2 ウェジー 2019.07.31

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