過剰に禁止されるか、性の対象にされる障がい者のセクシュアリティ 必要な性教育とは

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虐待サバイバーは夜を越えて

 ろう学校に通うMさん(現在は戸籍名を「翼」に改名)は、父や離婚した母、母の恋人から暴力や性的虐待を受け、「自分は虐待されて当然。人間ではなくゴミ未満の存在」と思い込んで育った。さらに、進学したろう学校での目を疑うような教師の暴力は、トラウマを生む。おまけにMさんがすがった盲学校の男性生徒・酒田は、性的な見返りを求めてくるようにもなっていた。

 今回は「障がい者の性教育」について、専門家にその問題点と障がい者の性被害を防ぐための「理想の性教育」のあり方についても聞いた。

<翼さんのインタビュー第一〜二回はこちらから読めます>

戸籍を改名して虐待の記憶から逃れた。11の自宅と、母の恋人

 「あいつは使える」「こいつは使えない」――。 こんな言葉が使われはじめたのは、いつだったか。自分以外の人間を“優劣”で振り分けようとするエゴが、組…

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過剰に禁止されるか、性の対象にされる障がい者のセクシュアリティ 必要な性教育とはの画像2 ウェジー 2019.07.31

ろう学校で受けた暴力と暴言、そして性被害

 ろう学校に通うMさん(現在は戸籍の名を「翼」に改名)は、寄宿舎を含めた11カ所の「家」で、父と離婚した母、母の恋人のそれぞれの自宅を行ったり来たりする…

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過剰に禁止されるか、性の対象にされる障がい者のセクシュアリティ 必要な性教育とはの画像2 ウェジー 2019.08.01

「ボクと契約して魔法少女になってよ!」

 Mに胸をはだけた自撮り写真を要求した酒田とは、千葉の高校に入った後も、関係は続いていた。離れていてもLINEのメッセージで会話ができたからだ。

 高校1年生の7月。酒田からその流れで地元のホテルに誘われた。よく晴れた日だった。

――ホテルなんだね、相手がヘンなことを考えてるかもという気持ちはあった?

「あまりなかったです。行先がラブホテルだったら、断っていました。でも、家の近所でボクもよく知ってる温泉ホテルだったので、大丈夫だろうと思ったんです」

――でも、大丈夫ではなかった?

「はい、最上階のレストランでおいしい食事をおごってもらったけれど、その後で、胸元の開いた館内着を着せられて……『このホテルは昼間、個室を無料開放してるから』と、個室に連れていかれました」

 そんなサービスなんてあったかな。内心いぶかしんだが、酒田に疑いの言葉を投げかけるのには抵抗があった。しばらく部屋では他愛もない話をしていたが、ふと気がつくと「学校で習ったマッサージをしてあげるから」と布団の上に横にさせられていた。さっきまでの陽気で穏やかだった酒田と様子が違う。どうしようと混乱しているうちに、目の前の男は覆いかぶさり、鳥肌の立つような手つきで胸をもんできた。

 裏切られた。

 言いようのない恐怖、無力感、諦めが交錯して、戦う気力なんてなかった。

「Mちゃん、かわいいね」
「Mちゃんは、セックスのときに挿れたい方? 挿れられたい方?」

 酒田はMの名を呼びながら、欲望をむき出しにしたセリフを浴びせかける。内面の性自認が「男」だったMには、「自分が女として扱われた」という複雑な屈辱もあった。「布団から見上げた、窓の外の青い空と、空を飛ぶ鳥を今でも思い出す」と、Mは後にブログに綴っている。

 しかし驚くことに、Mはその後も酒田と連絡を取り合った。Mがはじめて、「あれは性被害」だという認識に至ったのは、2年後の18歳のとき。

「実は、当時はショックのあまり記憶が抜け落ちているというか、あいまいで……。それに、あれが『怒りを感じていいこと』『拒否していいこと』だと分からなかったんです」

 そこから、ようやく酒田からの連絡を無視するようになる。翌月に「ボクと契約して魔法少女になってよ!」という不可解なメッセージが届いてからは、LINEのアカウントはブロックし、完全に連絡を絶った。

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