NOと言える人間になるための、心地よいハグとは
「子どもが性被害を“不快”なこととして拒否できるようになるためには、まず“快”を知らなければ判断できません」
児嶋氏は、長年の研究から「性を心地よいもの」として伝えることの重要性を解く。
「そのためにもお子さんが求める限り、ハグなどをして甘えさせてあげてください。好きな人とのハグは“快”、信頼できない人とのハグは“不快”だとわかるようになります。よく、知的障がい児の親御さんからは『もういい年なのに幼児みたいに抱っこをしていると成長しないのでは』と心配の声があがりますが、それは逆です。心の距離が近くなれば、身体は勝手に離れていきます。肉体的接触がなくても大丈夫だという安心感を得るからです」
一方、未成年に手を出した酒田のような欲望も、「性の権利」として認めるべきかといえば、それは違う。
「権利をそのまま行使すべきでないときもあります。たとえば、一夫多妻制と一夫一妻制の国で不倫の扱いが違うように、欲望の中には、その国や時代の道徳として受け入れられないものもあります。今自分がいる環境の中で、その性をどう扱うかは、考えなくてはなりません。また、充分な性教育を受けていれば、『自分の性』の尊重は、『相手の性』の尊重にも繋がることもわかります。すなわち、相手の権利を侵害するような加害者も減っていくのではないでしょうか」
<つづく>
<翼さんのインタビュー第一〜二回はこちらから読めます>
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