スケジュールだけでは見えない膨大な仕事量
保育士の仕事内容を「子どもと一日中遊んでいるだけ」と軽んじる人もいるかもしれない。以下は、ある保育園での一日のスケジュールだが、これを見る限りでは、保育士の仕事は子どもとの遊びと食事がメインのように見える。
・7:30~9:00 順次登園
・9:00 朝のお歌、おやつ
・10:00 挨拶、散歩、外遊び
・11:45 給食、歯磨き
・12:00 お昼寝
・15:00 起床 おやつ 縦割り保育
・17:00 順次降園 自由遊び
・18:00 夕飯 歯磨き
・21:00 最終降園
しかし、このスケジュールの中には、膨大な量の仕事が隠れている。たとえば、Aさんの保育園での12時〜15時の「お昼寝」の時間にやる作業は以下である。
・子どもの呼吸チェック(10~15分毎)
・明日のカリキュラムの作成
・今日の反省の記入
・子どもの連絡帳への記入
・ケガの報告書の作成
・午後の制作の準備
・トイレの掃除
これだけの内容を、3時間で終わらせなくてはならないのだ。しかも3時間といっても、お昼寝の間、園児全員が寝ているわけでもない。早めに起きる子どももいる。いつ起きるかもわからない状態で、子どもに気を配りながら作業をこなすのである。
そのため、昼食の時間は10~15分だったとのこと。労働基準法第34条では、「勤務が8時間以上続く場合、少なくとも1時間の休憩をとらなくてはならない」としている。しかし、そんな時間をとれる余裕もなく、当たり前のように作業をこなしているのだ。
このほかにも、年間、月間、週間カリキュラムの作成やイベントの企画立案などもある。勤務時間内にできなかった仕事は、家に持ち帰って行うことも多かったが、時間外勤務手当などが支給されることはなかった。
彼女は17時の降園時に、持ち回りで園児たちの夕飯も作っていたという。彼女の園では、栄養士はお昼ごはんのみを作り、午後には勤務が終了する。そのため夕飯は軽食ではあるが、栄養士が決めたメニューを保育士が作るのだ。
休憩らしい休憩もとれず、これだけの作業量を毎日こなしながら、子どもの命を預かるという責任もつきまとう。それにもかかわらず、給与水準が平均より低い現実は、保育士を続けるモチベーションの低下につながるのも無理はないだろう。