求職者は仕事の“やりたくないリストこと”を作成すべし
一方で、不幸なミスマッチを防ぐためには、求職者側も“自分はどんな働き方をしたいのか”というビジョンを明確にする必要があるだろう。
大室氏「その通りなのですが、『自分がなにをしたいのか』ということを分かっている人はあまりいません。ただ、『これだけはしたくない』ということはある程度分かっているものなのです。まずは自分の“やりたくないことリスト”を作成することを、私はオススメします」
しかし、仕事において“やりたくないことリスト”に該当する業務に直面することは誰しもあり得る。そのときに、すぐさま「辞める」というカードを切ることは、あまりすすめられない。
業務内容によってはスキルの習得に時間がかかるものもあり、うまくいかない場面はあるだろう。それが“やりたくないことリスト”の内容と合致していたとしても、少し耐えてやってみたら案外得意だったりもするかもしれない。
大室氏「辞めるかどうかの判断は、なぜそれを自分が“やりたくない”のかも含め、冷静に見極めてする必要があります。そのためにも、最初の段階で『どういうスキルを身に着けたいのか』『どういう働き方をしたいのか』をより詳細に設定しておくといいでしょう」
日本企業はジョブ型にシフトしていく
日本の企業は年功序列を重んじる“メンバーシップ型”が多い。しかし大室氏は今後、多様な働き方に対応するため業務を細かく分ける“ジョブ型”が増えていくと予想している。
すでにジョブ型の職場は徐々に増加しつつあるが、大室氏によれば、採用時に「ジョブ型で年功序列ではない」と謳うものの、実態はメンバーシップ型から抜けきれない企業が多いという。
いわく、能力や実績を正当に評価してもらえるはずと期待して入社したにもかかわらず、蓋を開けてみれば年功序列で理不尽の多い職場だったというケースでのメンタル不調は、少なくないそうだ。
大室氏「今の若い人はスキル習得に対する興味が高く、ジョブ型という働き方に高い親和性を持っています。ただ、上の世代はメンバーシップ型の立ち居振る舞い方しか知らないので、若い人とのギャップが生じやすいと感じます。抽象的ではありますが、そのギャップは若い社員がメンタルヘルスを崩す大きな原因になりがちなのです」
では上の世代がすっかり辞め、新陳代謝が進めばそのようなギャップは解消に向かうのだろうか。
大室氏「大手商社は未だにメンバーシップ型のところが多いのですが、業績の良い大手商社では『先輩の言うことに従っておけば、毎年給与は上がっていく』という未来図を従業員に見せることが出来、メンバーシップ型でも上手く回っている印象です。そうした大企業はメンバーシップ型のまま残っていくかもしれません。
ただ、そういう明るい未来を約束できない会社は、ジョブ型に切り替えなければ若い労働者が離れ、経営は厳しくなると考えられます。従業員の定着には、『我社で働くと〇年でスキルを身に着けられる』などのメリットが必須です。今はジョブ型に企業が変わっていく過渡期と言えます」
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