若者の「斜視」が急増しており、その原因としてスマートフォンの長時間利用が影響しているとの指摘が相次いでいる。
若者に急増している「急性内斜視」は、瞳が内側に寄って戻らなくなる症状が現れる。目は至近距離のものを見る時、黒目が内側に寄る「輻輳(ふくそう)」という動きをする。しかし長時間、近距離でスマホを見ることで、輻輳の状態が固定化してしまう恐れがあり、急性内斜視を引き起こす可能性が指摘されている。
日本弱視斜視学会は日本小児眼科学会と連携して、2018年12月末から今年2月にかけ、全国の医師およそ1000人を対象に、急性内斜視と診断された子どもが長時間、スマートフォンやタブレット端末を使用していたのかなどの実態調査を進めた。
その結果は、「急性内斜視」の若者を診察したと回答した医師が全体の42%にのぼり、その内の77%が、「スマートフォンなどの使用が関連していると思う症例があった」と回答している。この調査では、スマートフォンの利用時間を減らしたことにより、「斜視」の症状が改善したという事例も含まれていた。
静岡県浜松市の浜松医科大学医学部附属病院では、10代の急性内斜視の患者が増加、それまで年間2~3人だった患者数は、3年前から10人前後となっているという。10人前後という数字だけなら、「それほどの問題ではない」と考えがちだが、その増加率は3倍にものぼっており、全国での発症数を考えれば、見逃せる事態ではない。
日本弱視斜視学会は今回の調査結果を受けて、全国の患者を対象に長期的な調査を進め、スマホとの因果関係を調べるという。また、3年後をめどに予防方法に向けた提言をまとめ、効果的な治療方法を探っていくとしている。
子どもはスマホを使っても目の疲れを感じにくい
では、現段階でスマホ利用による急性内斜視発症の危険性をどのように回避すればいいのだろうか。
眼科医は、若者は長時間スマホを見ていても目の疲れを感じづらいとした上で、「スマホを使ったら、目を休めることを習慣づけることが大切」と指摘している。
疲れにくいがゆえに、スマホを見ているうちに1~2時間が過ぎてしまうことも珍しくない。問題は、目の発達が十分ではない10歳以下の子どもの場合には、輻輳運動が長時間続くことで急性内斜視になる危険性が高く、注意が必要であることだ。
具体的な予防策としては、スマホと顔を「30センチ以上離す」ことにより、至近距離でスマホを使用しないようにする。さらに、「スマホを30分見たら、5分間は目を休ませる」ことが大事。そして、「目を休ませている間は、なるべく遠くを見るようにするのがよい」。そのうえで、「スマホの使用は4時間以内に制限することが望ましい」としている。
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