北朝鮮の闇市 経済制裁を受けても人々が生き抜く理由

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 マンガに描かれたように、闇市ではパン、焼き鳥、雑炊など政府の配給では手に入らない食べ物を買うことができた。

 闇市で売られる商品の品質は、決して良くはなかった。マンガでは進駐軍のキッチンの残飯をいっしょくたに煮た雑炊にコンドームが混じっていたりするし、肉がたっぷり入った「スタミナぞうすい」の中身は犬の肉だったりする。それでも、身動きできないほどひもじい思いをするよりは、はるかにましである。

 買う側だけでなく、売る側にとっても闇市やその周辺は命をつなぐ場だった。進駐軍用の慰安施設に売られた女性は、助け出された後、闇市の近くで飲み屋を開業する。飲み屋は女手ひとつで何もなくてもとりあえず始められる商売として、戦争で夫や親を亡くした女性に貴重な収入をもたらした。

 その飲み屋に、行商の少年がロブスターと偽ってエビガニ(ザリガニ)を売りに来る。当時、戦争で家や家族をなくし、行商で暮らしを立てる子どもは少なくなかった。

闇市が非難される2つの理由

 飢饉の起こった1990年代後半の北朝鮮でも、主に闇市を生活の場とする「コッチェビ」と呼ばれる子どもたちが多く出現している。政府の無謀な戦争や失政で幼くして人生を狂わされた日本と北朝鮮の子どもたちには、苦境を生き抜くたくましさが共通して感じられる。

 終戦直後の食料不足の解消に闇市が活躍したのは、戦争に負けた日本だけではない。戦勝国でも同様だった。フランスでは政府が価格統制をあまり厳しくせず、日本と同じく闇市の存在を黙認した。

 そのおかげで、食料を求める暴動で社会が無秩序に陥ることはなかったし、食料の生産が完全に止まることもなかった。政府の統制で安く抑えられた値段では、売っても利益にならないので、生産そのものが途絶えてしまう。米国の経済学者ミルトン・フリードマンは、戦後フランスの闇市について「経済学的には非常に良いものだった」と述べる。

 ところが闇市はしばしば、道徳的に非難される。その理由のひとつは、値段が高いことだ。しかしすでに述べたように、もし統制で値段を低く抑えすぎれば、十分な食料が生産されず、結局は多くの人が飢えることになる。一方、値段を自由に設定できれば、価格競争が起こり、無理のない水準へと徐々に下がる。

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