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選挙の投票率が低いと何が起こるのか。統計学的に分析してわかったこと

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「Getty Images」より

 7月21日に行われた第25回参議院議員通常選挙において、自民党は改選前より9議席減らし、非改選の議席を含めても自民党単独で過半数を割り込んでしまいました。過去の例から見てもこの議席減は「惨敗」と称してもおかしくない状況です。にもかかわらず、党の幹部からは「消費税率引き上げに民意を得た」「憲法改正への議論は行うべきと国民は審判を下した」などといった強言が発せられています。今回の選挙の結果で本当に民意を得たといえる根拠はあるのでしょうか。 

 そこで今回は、有権者の投票行動から、政権与党は有権者から信任を得たのかどうかについて分析していきます。

政党の得票比率と獲得議席比率の差について

 今回の参議院議員選挙の改選数は124。そのうち選挙区で74、比例代表で50の議席が決められます。比例代表制では「ドント方式」という手法で議席が割り振られます。各政党の得票数を1、2、3、4…と整数値で割っていき、その票の大きい順に議席を配分していきます。今回の得票数を例にとると、以下の表のように議席が割り振られていきます。

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 この方式によって得られた比例代表での各政党の議席数は以下の通りです。

選挙の投票率が低いと何が起こるのか。統計学的に分析してわかったことの画像3 各政党の得票率と議席割合はほぼ同様であるといえるのですが、ただ自民党に関しては、50×0.353=17.65と単純な比例配分に比べれば若干ではありますが議席数が多くなっています。ドント方式は大政党に有利であるとの証明もなされているようですが、比例代表での議席の割り振りはほぼ得票比率と同等と言っても差し支えないでしょう。ちなみに前回の参議院議員選挙比例代表制での自民党の得票率は35.91%であるので、比率はほぼ同等といえます。この比例代表での自民党と公明党の議席数合計は26で、野党との差は2しかありません。

 では、選挙区での得票数と議席割合の差を見てみましょう。まずは2人以上当選するいわゆる中選挙区13箇所のうち、公明党候補が立候補していない6の選挙区での自民党の得票率は47.3%で50%を下回っていますが、議席獲得は14のうち8と57.1%の議席を確保しました。また公明党候補が立候補している7の中選挙区では、自民党得票率24.8%に対し、議席獲得は28議席中8議席で28.6%。

 ここに連立与党である公明党の得票を加えると得票率41.8%で議席は28のうち15を獲得。ここでも過半数を占めています。そして32ある1人区全体での自民党候補の得票率は51.3%でしたが、その得票率で稼いだ議席数は22で実に68.75%の議席を獲得しているのです。32の1人区に居住する有権者の数は全体の3割と言われていますが、この3割が残りの7割を凌ぐ大きな議席数の差を生み出しているというのが現在の選挙制度なのです。

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 そんな中、東北の4つの1人区において自民党現職候補が野党統一の新人候補に敗れるという一幕もありました。この件に関して様々な分析がなされており、TPPへの反発が一因だとする論調があるようですが、もしそうであるとすれば、他の農業地域でも反発があっても良さそうなものです。もちろんこの件もあるとは思いますが、やはり東日本大震災に対する復興対策への不満が大きいと感じます。さらには前回の選挙から島根と鳥取、徳島と高知が合同選挙区になり、2県から1名の議員選出という形となりましたが、近い将来東北にも合区が導入されるのではという疑心暗鬼も投票行動に現れたのではないでしょうか。

なぜ投票率が上がらないのか

 ここまでは、実際に投票された票における得票数で割合を示してきましたが、本来であれば、有権者全体の中においてどれだけの支持があるのかが重要なのではないでしょうか。

 今回の選挙の投票率は48.80%で1995年の44.52%に次ぐ低さとなりました。この投票率から、実際の有権者における政党の得票率で考えると、比例代表での自民党の得票率は

35.3% × 48.8% = 17.2%

となり、この率で38%もの議席を得たことになります。また小選挙区では投票率49.5%だったので

51.3% × 49.5% = 25.4%

 となり、有権者の4分の1の支持で68.75%もの議席を得たことになります。さてこの数字が本当に「民意を得た」数字といえるのでしょうか。

 投票率が低ければ、支持基盤の強い政党の議席数がその支持率以上に大きく議席を獲得するのが現在の選挙制度です。「そのまま関心がないといって寝てしまってくれれば、それでいいんですけども、そうはいかないでしょうね」と過去の首相が発言したことでもわかるように、現政権与党にとってこの低投票率は安泰を保証するものとなってしまうのです。本当に有権者の民意を伝えるためにはやはり投票率を上げることしかないのですが、ではなぜ投票率が上がらないのでしょうか。

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