アメリカ:1日に1件以上の銃乱射事件〜ヘイトを煽るトランプと銃規制問題

文=堂本かおる
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 銃大国アメリカで、たった13時間のうちに2件、計31人が殺害される乱射事件が起きた。8月3日土曜日の午前、テキサス州エルパソのショッピング・センターで男がAK-47スタイルの大型銃を撃ちまくり、22人死亡、26人負傷の大惨事となった。そのショックも冷めやらぬ日曜の午前1時、オハイオ州デイトンのクラブで乱射が起こり、犯人を含む10人が死亡し、27人が負傷した。

 ショッピング・センターは家族連れの買い物客でにぎわっており、死傷者には生後4カ月の乳児や複数の子供が含まれていた。無傷で逮捕された犯人(白人男性・21歳)は反ヒスパニック、反移民の白人至上主義者と伝えられている。

 テキサス州エルパソはアメリカとメキシコの国境沿いの街であり、住人の多くがメキシコ系だ。乱射事件の最中に買い物客が撮影したビデオを見ても、逃げ惑う人々の多くがスペイン語を話している。殺害された22人のうち、8人はメキシコ国籍者と発表されている。犯人は同じテキサス州の遠方から車で9時間かけてエルパソまでやってきており、メキシコ系/メキシコ人がターゲットだったのは明らかだ。

 オハイオ州デイトンでは、犯人(白人男性・24歳)は午前1時にクラブ前の歩道で乱射を始めている。そのままクラブ内に突入して乱射を続けるつもりだったとみられるが、現場付近にいた警官に射殺された。死亡者9人の中に犯人の妹(22)が含まれていた。意図的に殺害したのか、偶然なのかは不明。犯人は「大量殺人に関心があった」と報じられている。

わずか4日前にも乱射事件

 2件の乱射のわずか3日前の7月30日と31日に開かれていた、2020大統領選・第2回目の民主党候補者ディベートでは、銃問題も語られたところだった。ディベート前日の29日にもカリフォルニア州で乱射事件が起こっていたからだ。

 乱射現場はカリフォルニア州サンタ・クララ/ギルロイで開催されていたフード・フェスティヴァル。死者3人、負傷者12人。死者には6歳、13歳の子供が含まれていた。犯人(白人男性・19歳)は乱射に使った大型銃 WASR-10 で自身の頭部を撃ち、死んでいる。

 犯人は犯行の直前に、白人至上主義者の愛読書となっている『Might is Right』の表紙の写真をインスタグラムにアップ。「ヒスパニックとシリコンバレーのカスみたいな白人」への嫌悪も書き込んでいた。

遅々として進まない銃規制

 銃規制は乱射事件が起こるたびに議論されるが、なかなか進まない。2014年にコネティカット州のサンディフック小学校での乱射で20人もの6~7歳児が殺された時にすら、規制は行われなかった。

 アメリカには強固な銃文化があり、かつ銃の擁護派は銃の所持は憲法で保証されていると主張する。だが、世論調査では圧倒的多数の国民が何らかの銃規制を望んでいると出ている。それにもかかわらず規制が進まないのは、 共和党の銃擁護派の政治家には、NRA(全米ライフル協会) から多額の献金がなされるからだ。献金を受けた政治家は「民主党は銃規制を行う。銃規制はアメリカ市民に保証された権利を奪うことだ」と煽り、自身の得票材料とする。これらが、銃規制が行われない理由だ。

 現在、検討されている銃の規制法は3つある。「購入時のバックグラウンド・チェックの厳格化」「大型殺傷銃の販売禁止」「レッド・フラッグ法(警察、両親、教師などが異変に気付いた人物の銃所持を一時的に停止できる法)」だ。

 「犯罪歴、精神病歴のある人物にノー・チェックで銃を販売」「一般市民が軍事用と同等の殺傷力を持つ大型銃を購入」という、常識では到底考えられない銃販売が行われているのがアメリカだ。その当然の結果として、大量乱射が起こり続ける。オハイオ州のクラブでの事件は今年に入って、なんと250件目の乱射事件だ。1日に1件以上起きている計算になる。死者の総計は277人、負傷者の数は1,000人を超えている。

 銃規制法は州によって大きく異なる。過去の乱射事件を見ると、規制法の在り方が乱射事件と関連していることが伺える。近年起こった乱射を死亡者の人数で順位付けると、ワースト10事件のうち4事件がテキサス州で起こっている。

 テキサス州は米国第2位の人口を持つ大型州であることが事件数の多さに関係しているとも言えるが、1件の乱射事件での死傷者数は銃の種類による。大量の犠牲者数は大型アサルト・ライフルによるものであり、一般人が手軽にアサルト・ライフルを購入できる、つまり銃規制の甘い州で大量死傷者の乱射が起きる傾向がはっきりと出ているのである。

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