先の参院選で躍進した、NHKから国民を守る党(N国党)。「NHKをぶっ壊す」をスローガンに戦った立花孝志代表が当選を果たしたという事実は、見過ごせない。インターネット発信のみで認知度を高め、巨大メディアのNHKにノーを突きつけた。これほど鮮やかにテレビの凋落ぶりを示す選挙はいまだかつてない。
NHKは果たして、「みなさまの公共放送」と言えるのか。その信が問われることにもなった今回の選挙。これを機に、NHKを肥大化させる原因ともなった放送法の見直しについて、真剣に議論をはじめてもよいのではないか。
法律の庇護下に置かれた公共放送
受信料の支払い義務は、放送法第64条「受信設備を設置した者は、協会(NHK)とその放送の受信についての契約をしなければならない」が根拠となっている。テレビを置けば強制契約となるわけだ。契約が義務であって受信料の支払いは義務とは書かれていないのに、現状は月額1,260円(地上契約の場合)の支払いを要請される。年間にしておよそ1万4,000円である。料金の支払いに納得いかず不払いを貫き、NHKに訴えられた人は少なくない。
NHKの平成30年度決算概要によると、同年度の事業収入7,332億円のうち受信料収入は7,122億円。つまりNHKは国民から集めたお金で成り立つ組織である。事業収入を支える柱は言うまでもなく放送法だ。
「法律で契約しろとなっているからお金を徴収できる」。よく考えれば極めて珍妙なビジネスモデルである。極端な話、何の経営努力も必要なく、技術やアイデア、斬新な商品を生み出さなくても潤沢な資金が得られる仕組みだ。「NHKの経営はバカでもできる」と言われるゆえんはまさにここにある。
そのように法律を笠に着て蓄えた資金を、NHKは何に使っているのか。平成30年度財務諸表の財産目録一覧によれば、NHKの資産は現金預金・有価証券、固定資産、特定資産など計1兆1,940億円で、純資産は7,666億円。有価証券の内訳を見ると、国債や政府保証債、地方債、事業債などの購入に多額のお金を投じていることが分かる。国民から受信料を徴収し、かつ国会で予算の承認を受けている放送局が、いったい何の目的でこれらの証券を購入しているのか。きちんと説明すべきではないのかと指摘する声もある。
厳しい競争社会を生き抜くわけでもなく、事業リスクや赤字を怖れる必要もない。何度も言うように、「法律に書かれているから」莫大な収入が保証されている点を忘れてはならない。
多額の資産を抱え込み、余剰資金を証券購入に回すほど「儲かっている」NHKだが、受信料を引き下げて国民に還元する気はないようだ。それどころか、今後の徴収業務は輪をかけて行われる可能性がある。放送法改正でNHKのテレビ番組がインターネット視聴できることになり、ネット環境が整うだけで受信料の支払い義務が生じる。これにより、NHKの懐はますます潤い、受信料の徴収に泣く国民はさらに増えるだろう。