NHKの何が問題か? 「公共放送の病」と70年前の政治的遺物である放送法

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法令違反の組織に受信料を支払う必要なし?

 N国党は、次のような問題を理由に受信料不払いを推奨している。

・職員の高すぎる給料

 平成30年度のNHKの給与費は1,115億円。職員の数が約1万人だから、平均年収は1,000万円に上る。会社員の平均年収(約400万円)のおよそ2.5倍の額である。NHK職員の給与の妥当性については、過去国会でも取り上げられ、問題視する向きも少なくない。

・職員の犯罪率

 NHKは、2004~2014年の10年間で、公表されているだけで70人以上の逮捕・処分者を出している。横領、着服、不正経理といった社内不祥事から、窃盗、わいせつなどの悪質犯罪、殺人、死体遺棄といった凶悪犯罪まで、内容もさることながら数の多さは深刻である。2015年以降も変わらず毎年数人の逮捕者を出し続け、2018年11月には「おはよう日本」のチーフプロデューザーが女性のスカート内を盗撮しようとして逮捕されるという事件が起きた。

・集金人の悪質行動

 自宅で待ち伏せ、ドアを蹴とばす、大声を出す、払わないと高圧的な態度に出る……。など、NHK集金人の素行の悪さは世間に響き渡っている。彼らはNHK職員として1,000万円の年収を得ているわけでは当然なく、NHKから受信料の徴収を委託されノルマが課せられているため、どうしても強引なやり口に頼らざるを得ない事情があるようだ。違法・無法な行為で集金に走るNHKに受信料を払う必要はあるのか? というのがN国党の言い分だ。

・視聴者から要望がありながら、スクランブル放送を実施しない

 スクランブル放送とは、料金を支払った者のみ番組視聴できるシステムである。WOWOWやスカパー!などを想像すると分かりやすい。「スクランブル放送を望む国民は8割以上」との調査結果があっても、NHKはスクランブル放送に関する情報を進んで提供しようとしない。受信料収入が圧倒的に減るからだろう。エゴに走る放送局のどこが「みなさまのNHK」なのか、N国の党は厳しく指弾した。

 他にも、経費の使い道や報道姿勢などの問題を取り上げ、受信料不払い推奨の根拠としている。立花代表はYouTube動画などを使ってこれらの情報を拡散し、ネット層からの支持を取り付けることに成功した。

NHKが庶民の不満のはけ口に?

 今度の参議院選挙では、「年金・社会保障」が大きな争点として浮上した。収入はなかなか増えず、明るい未来を描けない。そんな漠然とした不安を抱く人は若者を中心に多い。このような情勢下で何かと攻撃の的にされやすいが、大企業やキャリア公務員、富裕層といった上流層。NHKは放送業界の権威的存在であり、そこで働く職員は高年収の「勝ち組」たちだ。苦しい生活にあえぐ庶民からすれば、まさに敵として映ってもおかしくない。

 NHK職員の給与に関しては、さまざまな見方があり、必ずしも高禄とは言い難い。というのも、NHKを含むテレビ局員は総じて高収入で、民放キー局はおおむね平均年収1,500万円ラインに達するほどだからだ。NHKだけが特別高いとは言えないのである。「給与を下げたら高待遇のライバル局に優秀な人材を取られてしまう」という理屈にも一理あるだろう。

 ただし、選挙ではそのような公平な視点をもって投票に臨む人が果たしてどれくらいいるのか、率直な疑問として残る。N国党のようにわかりやすく「NHK職員の給料はみなさんの2.5倍ですよ! 犯罪者も多いのに、そんな組織に受信料なんか払う必要ありますか!」と訴えられたら、大きく雪崩を打ってしまうのが大衆というものだ。NHKというわかりやすい敵、ワンイシューに特化した巧みな戦略、庶民の間でくすぶる不満。これらの要素が有機的に結びついた結果、巻き起こったのがN国党旋風ではなかろうか。

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