
「Getty Images」より
「また教師になりたい」が少ない日本
経済開発協力機構(OECD)が5年に1回実施している国際教員指導環境調査(TALIS-Teaching and Learning International Survey)の結果が発表された。
これにより、日本の教員の過重労働が他国と比べ、依然として、突出していることが再確認された。OECD加盟国など48カ国・地域の中学と15カ国・地域の小学校が参加した調査の結果からは、日本の教員の断トツに長い労働時間、それも、授業以外の業務に忙殺されている姿が浮き彫りになった。
報じられた調査結果によると、日本の中学教員の1週間の仕事時間は56.0時間。参加国平均の38.3時間より約18時間も長い。しかもそれは、授業や、より良い授業をするための研究とスキルアップに時間が割かれたのではない。
日本の授業時間は18.0時間で、平均の20.3時間より約2時間も短かった。知識や専門性を高めるための「職能開発」に費やした時間も0.6時間で最短だ。一方、授業以外のこと–部活などの課外指導と事務業務–にはそれぞれ7.5時間、5.6時間と、いずれも参加国で最も多くの時間が割かれている。
仕事への自信や満足度も低く、「教員になったことを後悔している」人は10%以上いる。「また教員になりたい」と答えた人の割合も、平均の75.8%に比べ、54.9%だ。
調査の統括責任者であるOECDのアンドレアス・シュライヒャー教育・スキル局長は、不必要な業務を見直し、「働き方改革」を進めることを提言。給料を増やす、職能開発の機会を増やすなどして、「若く優秀な人たちが教員の道に進みたいと思うようにすることが大事だ」とコメントした。
部活と事務に時間をとられる日本の教員
教員の過重労働はもう何年も前から指摘されている問題で、今までも対策が講じられてこなかったわけではない。しかし、このたびの調査結果を見ると、状況は一向に改善されていないようである。
特に気になるのが、教員の時間が授業以外の業務に取られてしまっていることだ。部活などの課外指導、そして事務業務にかかる時間が他国と比べて圧倒的に多く、質の高い授業に必要なはずの職能開発に費やす時間はほぼないも同然で、参加国のなかで最下位だ。
部活といえば、筆者が住んでいたイタリアには学校の部活動はなくて、子どもがスポーツや音楽をしたい場合、個人的に教室など活動の場所を探す必要があった。その点、誰でも気軽に学校でスポーツや文化活動に親しめる日本の部活はいいなと思う。
しかし、そのために先生が放課後や土日の多くの時間を半強制的に、しかも「無償」で(後述するが、公立教員は残業代が出ない!)指導させられるのは、イタリアならあり得ない。
事務業務がまた、多岐にわたって煩雑だ。会議、報告書作成、調査・統計への回答、生活指導や校内美化といった校務、給食費や部活動費等に関する処理や徴収……。
保護者対応も時間が取られる。夜10時を過ぎて電話をかけてくる親などもいるが、電話を取らないとクレームにされるから、対応しないわけにいかないそうだ。「教員の仕事と家庭の両立は無理ゲー」と、ある元教師がブログに書いていたが、確かにこんな状況では教員が私生活を充実させるのは難しい。