空前のミュージカルブームの今こそ観たい、日本をきっかけに世界でヒットした名作「エリザベート」

【この記事のキーワード】

 2000年には、本公演と同じ東宝が一路真輝をエリザベート役に迎え、上演。その後は宝塚と東宝のふたつのバージョンはともに人気レパートリーになりますが、日本での上演の成功を口火に上演国が増加しました。オランダではトートが黒人系のラテン風色男だったり、スイスでは湖の上の仮設劇場だったり、また「愛と死の輪舞」が逆輸入されたりと、宝塚での初演同様、ライセンスの制約に縛られず各国が自在に翻案できたことも、その成功の一因でしょう。

「エリザベート」以降、ウィーン発の作品は世界各国で上演されることが増え、ミュージカル史上の第三極に躍り出ました。作曲のリーヴァイは「エリザベート」1作の報酬だけで、ウィーンの世界遺産でハプスブルク王朝の歴代君主の離宮でもあったシェーンブルン宮殿内に居を構えることができたと明かしています。

改良を重ね、時代にフィット

 他者から制約されず自由に生きたいという願いは、現代社会においても多くのひとにとって身に覚えのある思いです。美貌と地位に恵まれながらも、宮廷という束縛の多い環境で、それでも自分の感情をとどめられなかったエリザベートの嘆きは、究極の生きづらさともいえるもの。そこで闘い自分の居場所を見つけ出す強さはとても現代的ですが、一方で、自分だけが大切で深い愛を捧げてくれる家族へも冷淡、他者と同じではない何者かでありたいという傲慢さも、またとても現代と近しいものです。

『天使にラブソングを!』と共に日本にゴスペルを根付かせたミュージカル~成功の陰にあるティーン支援

 ニューヨークの黒人地区ハーレムにデンプシー・シアターという500席程度の小さな劇場がある。そこで今、ゴスペル・ミュージカル『レット・ザ・ミュージック・…

空前のミュージカルブームの今こそ観たい、日本をきっかけに世界でヒットした名作「エリザベート」の画像1
空前のミュージカルブームの今こそ観たい、日本をきっかけに世界でヒットした名作「エリザベート」の画像2 ウェジー 2018.10.18

 先見性も生きづらさも時代を先取りしてしまったエリザベートと違い、夫フランツや義母ゾフィーは、激動の歴史のうねりから帝国を守ろうと、“私”を捨て立場と義務に生きた人たち。特にゾフィーは宝塚での初演時、意地悪な姑による嫁いじめ、という矮小化した描写にとどめられていましたが、2004年に新曲が追加され、君主制維持の妨げでしかないエリザベートの排除は私怨ではなく、皇太后という立場だからこその息子と孫、そして国への愛であることが示されるようになり、より物語へふくらみをもたせています。

 そのためか、あくまで筆者の周囲からではありますが、「エリザベート」は、男女で感想に差が表れるように感じます。女性はストーリー全般を楽しみ、トートの愛にロマンを感じるのに対し、男性から聞くのは「全部エリザベートが悪いんじゃない?」という疑問の声。それはそれで、確かにおっしゃるとおりでもある、のですが……。とはいえ、初演時にはなかった「生きづらさ」という概念が浸透した昨今、つらい環境と闘う強さと、時には逃げる勇気。その先に、無条件の愛が待っていたという救いの現代性は、今後より増すのかもしれません。

1 2 3

「空前のミュージカルブームの今こそ観たい、日本をきっかけに世界でヒットした名作「エリザベート」」のページです。などの最新ニュースは現代を思案するWezzy(ウェジー)で。