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かんぽ生命の不適切販売 保険は「目的」次第で契約の利益も変わる

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生き延びるためのマネー/川部紀子

 ファイナンシャルプランナーで社会保険労務士の川部紀子です。かんぽ生命の不適切販売が問題となっています。職員の営業成績のために、顧客にとって不利益となる契約が繰り返されているというのです。

 例えば、保険Aに入っている顧客に保険Bへの乗り換えを提案したとします。このとき、解約のタイミングで保険Bに乗り換えるのではなく、半年以上もの間、保険Aと保険Bを同時に加入させているケースがありました。これでは顧客は新しい保険Bだけでなく、不要となった保険Aの保険料も支払うことになってしまいます。なぜこのようなことが起きてしまったのでしょうか?

 営業成績のために保険A、B、Cと、追加の契約をとりたいのが営業社員の本音です。しかし顧客にとって大半の場合、追加の契約など不要なもの。ですから営業社員は「追加」ではなく「乗り換え」を勧めます。

 でも、似たような保険や条件の悪い保険への乗り換えを勧める必要なんてありません。そこでかんぽ生命は、営業成績目当てに不要な乗り換えを防ぐといった目的で、解約のタイミングでの乗り換えについては、営業成績を落とす仕組みを作っていました。しかし保険Aと保険Bの契約期間が半年以上も重なっていた場合はどうでしょうか? 「乗り換えではなく、保険Aに加えて保険Bも必要だと考えて契約したのかもしれない」と解釈することもできますから、営業成績も下がりません。同時に複数の保険に加入させているケースが発生していたのにはこのような背景があったのです。

 また保険Aを解約後、4カ月以上空けて保険Bに契約させるケースもあったようです。この場合、顧客は保険のない期間ができてしまいます。その間に保険の対象となる人(被保険者)の健康状態が悪くなって、保険Bに加入できなかったというケースもあるそうです。職員の営業成績のために保険を失ってしまった人もいたのです。

 こういった顧客に不利益を被る契約方法が18万件もあったことが発表されました。保険の復元などの対応を受けられる可能性もあるようですので、もしや?と思った場合は問い合わせをすることをおすすめします。

 さて、こうした報道の真っ只中、この春かんぽ生命に加入した方より質問がありましたので紹介したいと思います。

100万円あげるから保険に入ってほしい!

 40代女性の実話です。

「高齢者施設に入居中でお金の使い道が限られた80代の叔父から100万円ほどあげたいと言われたんです。ただし、そのお金でかんぽ生命に入ってほしいと言われまして……」

 昔の保険は預貯金をするよりお得なものもありましたが、現在の保険は貯蓄商品であっても利回りという意味では魅力がありません。そのことを知っていた彼女は、現金でもらって2人の子どもたちの教育資金に当てる方法を提案しました。

 ところが、おじさんは「かんぽ生命の保険」に入るという方法以外は認めてくれなかったと言います。どうしてそんなにかんぽ生命にこだわるのかを尋ねたところ、「郵便局の人にお世話になっているから」という回答。困った彼女は、ゆうちょ銀行の「定額貯金」で貯金をする方法、「ジュニアNISA」で子ども名義の投資をする方法も提案したのですが、「お世話になっている」郵便局の女性社員の職種や成績の都合上、貯金よりも保険が良いらしく、また、その郵便局では投資商品の取り扱いがないためジュニアNISAという選択肢がないとのことでした。

 そのおじさんがとにかく保険にこだわる理由は、「かんぽ生命」というよりも、その営業担当の「人」だったのです。

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