テキサス州エルパソでの乱射事件は8月3日の午前中に起こった。死者22人、負傷者25人。犯人は逮捕されている。
トランプは同日の午後、以下のツイートを行なっている。犠牲者については「多くが殺された」とだけあり、追悼の記述はない。
「テキサス州のエルパソでひどい銃撃。事件の報告内容はベリー・バッド、多くが殺された。州、地域行政、警察と協働する。連邦政府の完全支援を州知事に約束した。皆が神と共にあるように!」
エルパソでの乱射の13時間後、8月4日の午前1時にオハイオ州デイトンでも乱射事件が起こった。9人死亡、27人負傷。犯人は警官によって射殺。
トランプの声明演説
翌5日の午前中、トランプはホワイトハウスより2件の乱射事件についての声明を読み上げた。通常のトランプのメッセージに比べると極めておとなしいトーンだった。エルパソでの乱射がヒスパニックを狙った事件であること、どちらの事件も大型銃によって大量の死傷者を出したことから、ヘイトを拡張し、銃規制を進めないトランプへの批判がすでに強まっていたことが理由と思われる。
声明は「我々の国家はレイシズム、偏狭、白人至上主義を糾弾しなければならない」と一見、妥当な内容から始まったが、聞く側は「糾弾どころか、拡張しているのはトランプと共和党だ」と怒りを募らせた。
声明の中でトランプは昨年2月に起ったフロリダ州パークランド高校での乱射犯を「モンスター」と呼び、「予兆がいくつもあったが、誰も何もしなかった。なぜだ?」と問いかけた。この問いは銃規制法を阻んでいるトランプと共和党への問いであるべきだ。
銃規制についてのトランプの回答は「レッド・フラッグ法」だ。言動に問題ある人物の銃所持を警察や両親などからの申請によって一時停止するもので、銃そのものを規制する策ではない。また、乱射事件多発の理由の一つを「ビデオゲーム」としている。
乱射のあったオハイオ州デイトンの人々を最も傷つけ、怒らせたのは、演説の最後の決まり文句「神のご加護を」の際、デイトンを「トレド」という別の街の名と言い間違えたことだった。
この声明朗読の後、トランプは追加文言をツイートしている。
「本日、ヘイトクライム犯と大量殺人犯への死刑法案提出を司法省に指示した」
ツイートの文中、DEATH PENALTY(死刑)が全て大文字で打たれていた。
トランプとベト・オルークの戦い
2つの乱射事件について、現地の住人だけでなく全米の市民、メディア、そして民主党の大統領候補者たちが激しく反応した。広がる人種差別と、進まない銃規制に非難の声をあげたのだ。
現地では犠牲者追悼のキャンドル・サービスが続き、事件のショックが全く冷めやらぬ中、トランプは自分を批判した政治家への攻撃を開始した。
事件後、選挙戦を中断し、急遽エルパソに帰郷したテキサス州エルパソ出身の大統領候補者ベト・オルークは、8月7日に予定されていたトランプのエルパソ訪問に対し、「大統領が来ないことを望む」と語った。
するとトランプはその日の夜に、以下のフレーズを含むツイートを行なった。
「ベト、ヒスパニックを思わせる似非ネーム」
(大統領候補としての支持率が)「1%しかない」
「犠牲者と司法関係者に敬意を表し、そして黙れ!」
ベト・オルークはアイルランド系の白人で、本名は「ロバート Robert」という。「ベト Beto」はロバートのスペイン語形「ロベルト Roberto」の愛称だ。オルークの祖父も同じロバートという名であったため、子供の頃に両親がベトの愛称を付け、現在もベトの名を使用している。エルパソはメキシコとの国境にあり、メキシコ系住人が非常に多く、メキシコ文化が浸透した街だ。オルークもスペイン語を話す。
トランプのツイートにオルークは以下のリプライを放った。
「あなたのレイシズムに触発された恐怖によって、私の故郷で22人が死んだ。エルパソは黙りはしない、私もだ」
オルークはMSNBC(ニュース専門ケーブル・チャンネル)のキャスターに「トランプは白人至上主義者だと思うか」と質問され、以下の返答を行った。
「彼はそうだ。それをはっきりと示している」「(トランプは)北欧からの移民がもっと居ればいいのに、なぜならハイチ人はAIDSを持ち込み、アフリカ諸国はシットホール(便壺)の国だ、と言った」
CNNでは以下のように語った。
「彼が言い続けているシット(クソ=たわ言)を知っているだろう。メキシコ人を強姦魔、犯罪者と呼んでいる」「彼はこの国にレイシズムと暴力を煽り立てている」
7日、エルパソを訪れたトランプは、「自分が3カ月前にここを訪れた時、人でいっぱいになった」が、「クレイジー・ベトは駐車場に400人だけだ」と、極めて幼稚なコメントを発した。
トランプはメラニアを連れ、負傷者が収容されている病院で記者会見を開いた。数人の医療関係者、負傷者はトランプとの接見を拒否したと伝えられている。そのため、トランプはすでに退院していた生後二カ月の乳児を病院に連れ戻し、メラニアに抱かせ、自分は親指を立てて記念撮影させている。この乳児の両親は共に乱射で亡くなっているにも関わらず。
A hospital official confirms to CNN that this is the baby who was brought back to the hospital to meet with Trump and FLOTUS after the child had been discharged. The two month old’s parents, Jordan and Andre Anchondo died protecting him during the El Paso shooting. pic.twitter.com/J468ygdPnM
— Jim Acosta (@Acosta) 2019年8月9日
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