かんぽ生命は特別なケースではない。日本で詐欺的なビジネスが横行する理由

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株式会社かんぽ生命保険が入る大手町プレイス(画像はWikipediaより/Kevin Shoemaker)

 かんぽ生命の不正販売問題が深刻な状況となっている。認知能力が低下した高齢者に不利な契約を結ばせるという犯罪レベルの事例も多数報告されており、「販売方法が不適切だった」という次元ではなくなっている。

 しかしながら、顧客のリテラシーの低さを逆手にとって商品を販売するというのは、今の日本では当たり前のことになっており、誤解を恐れずに言えば、ほとんどの事業者が似たようなビジネスを行っている。消費者が主体的な意思を持って事業者と向き合わなければ、こうした事例をなくすことはできないだろう。

高齢者にとって郵便局は今でも「お役所」

 かんぽ生命は、広範囲な保険の不正販売問題が発覚し、謝罪会見に追い込まれた。だがその後も、続々と不正販売の実態が報道されており、事態が収束する兆しは見えない。

 不正契約の手法は多岐にわたっており、新旧契約の保険料を二重払いにする、必要性が薄いにもかかわらずわざわざ新契約を締結するなどの事例が報告されている。

 ネット上では一連の報道を受けて、かんぽ生命の悪質な実態を公表する人が出てきており、中には認知症だった祖父母に対して、貯金が底を突いてしまうような金額の保険契約を結ばされていたというケースもあった。これが事実であれば、もはや完全に犯罪領域である。

 かんぽ生命は日本郵政グループの保険会社だが、実際の商品販売は郵便局が行っている。多くの保険会社が存在する中、かんぽ生命でこうした度を超した不正販売が行われた背景には、販売チャネルが郵便局であることが深く関係している。

 小泉政権時代、郵政民営化が議論されたが、最終的に政府が下した結論は、完全民営化は行わないというものだった。過疎地域も含め全国のあらゆる場所に郵便局を設置するという公的サービスの性格を残しつつ、民営化は行って株式を上場するというかなり中途半端な結果となった。

 高齢者にとって郵便局は今でも「お役所」である。郵便局は、他の金融機関が出店できないような地域にも店舗を構えており、圧倒的にアクセスしやすい。身近に「権威」と「信頼」のある「お役所」がたくさんあり、局員が手取り足取り、世話を焼いてくれるとなれば、無条件でハンコを預けてしまう高齢者が多数、出てくることは容易に想像できる話だ。

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