
『ジェンダーについて大学生が真剣に考えてみた──あなたがあなたらしくいられるための29問』(明石書店)
「#MeToo」運動などをきっかけに、「ジェンダー」に関する意識の激変が日本社会でも起きている。
職場や学校などでハラスメント意識の向上が見られるなどの前向きな変化が出始めているが、その一方で、「逆差別」といった言葉が男性向け週刊誌やネット上を駆け巡るなど、バックラッシュの動きがあることも事実だ。
日頃、不当な目に遭っているという被害者意識を抱いていたり、また「ジェンダー」について学び考える機会がなかったがゆえに、急激な社会の変化に不安を覚えたり……反発の要因は様々に考えられる。
そんななか、『ジェンダーについて大学生が真剣に考えてみた──あなたがあなたらしくいられるための29問』(明石書店)という本が話題を呼んでいる。
タイトルの通り、この本を書いたのは大学生。一橋大学社会学部でジェンダー研究を専門とする佐藤文香教授のゼミに所属していた学生たちだ。
『ジェンダーについて大学生が真剣に考えてみた』の画期的なところは、ジェンダー論の初学者にも理解しやすいように工夫してあることである。「あなたがあなたらしくいられるための29問」というサブタイトルの通り、この本は普段の生活で出てくる疑問に答えるかたちで構成されている。
目次を開けば、「「○○男子/○○女子」って言い方したらダメ?」「どうしてフェミニストはCMみたいな些細なことに噛みつくの?」「女性専用車両って男性への逆差別じゃない?」「女性はバリキャリか専業主婦か選べるのに、男性は働くしか選択肢がないのっておかしくない?」「性暴力って被害にあう側にも落ち度があるんじゃない?」といった質問が並ぶ。誰もが心に抱いたり、会話のなかで出てきたりする疑問だろう。こういったトピックに答えるかたちで本書は構成されている。
「どうしてこのような本が編まれたのか?」、そして、「ジェンダー論を学ぶことの意義とは?」。この本を執筆した児玉谷レミ氏(現在は一橋大学大学院社会学研究科1年)、前之園和喜氏(同1年)、山本美里氏(同2年)、ゼミの担当教員である佐藤文香教授に話を聞いた。

取材に応えてくれた『ジェンダーについて大学生が真剣に考えてみた──あなたがあなたらしくいられるための29問』の主要執筆者たち
ジェンダーに関する質問に答えるのは意外と難しい
──『ジェンダーについて大学生が真剣に考えてみた』は、日常生活に根差したかたちで構成されている珍しいジェンダー論の本だと思いますが、どうしてこういった本が生まれたのですか?
児玉谷レミ(以下、児玉谷) 大学生だと初めて会った人との会話で「なにを専攻してるんですか?」ってよく聞かれるんです。その質問に「ジェンダー研究やってるんです」と言うと、「フェミニストってさ、なんでCMとかあんなくだらないことに噛みつくの?」とか、「ミスコンに反対してる人いるけど本当にくだらないよね」とか言われたりすることがあるんです。そういう質問にうまく答えられなかったり、感情的になって無理に答えたことによって相手との関係が険悪になったり、そういう残念なことがよくあって。