元アダルトグッズメーカーの広報が目撃してきた「女らしさ」「男らしさ」と、その行方/工藤まおりさんインタビュー

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工藤まおりさん©okazaki

 大手アダルトグッズメーカー「TENGA」の名物広報として4年間活躍した工藤まおりさん。2019年4月に退社してフリーランスになった現在は、企業のPRやコミュニティの運営、ライターとして幅広く活躍している。

 まおりさんが女性向けセルフプレジャーアイテムを世に広めるため尽力した4年間のうちに、女性の身体やセクシュアリティをめぐる“タブー”の意識は、どのように変化したのだろうか。そして、私たちを縛りつけ、分断している「女らしさ」「男らしさ」の問題についても聞いてみた。

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工藤 まおり(くどう・まおり)
津田塾大学数学科卒。 新卒でリクルートスタッフィングで法人営業を経験後、グッズメーカーTENGAに転職。 PR業務に4年携わったのち、2019年に独立。 数社のPR業務とライターやコミュニティー運営等を行っている。@maori212 note

TENGA入社、その4年後の現在

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アフリカのゾウは大きかった!©okazaki

――TENGA退社は驚きましたが、そのきっかけは何だったんですか?

工藤「もともと独立したい気持ちはあったのですが、昨年11月にアフリカ旅行を旅行して動物たちを見たことが大きなきっかけのひとつでした。昼夜、自分の判断で行動範囲を決めているゾウやライオン、キリンを見ていると、私も9時に出社して18時に退社するという生活が不自然な気がしたんです。人間だって、広義には動物ですし(笑)」

――その理由って、工藤さんがTENGAへ入社されたきっかけにも通じるような気がします。

工藤「4年前にTENGAに転職したのも、もっと自由な社会になったらいいのにな~という思いがありました。世間では、なんとなく“タブー”とされていることだから、なんとなく“しちゃダメ”って思われている物ごとがたくさんありますよね。でも、そんなことは気にせずに、もっと自然に生きられるようになったらいいなと考えていました。そのひとつが、女性の身体やセクシュアリティに関する“タブー”でした」

――TENGAに在籍した4年間で、その“タブー”はどのように変わったと思いますか?

工藤「この数年間で、SNSで性の問題を積極的に発信する方が増えた印象があります。助産師さんの資格を持つ性教育YouTuberのシオリーヌさんや、性感染症の予防を啓蒙する現役保険医のコンドームソムリエAiさん……専門知識を持ってらっしゃる方が、それぞれの知見から正しい情報を発信されるようになったことは大きいですね。性や身体について話題にすることのイメージも、少しずつ柔らかくなっているなあと感じています」

――工藤さんもフリーランスのライターとして情報を発信されていますね。

工藤「最近、カップル同士で彼女の生理日を共有できるアプリについて記事を書いたんですが、予想以上の反響をいただきました。同年代くらいの男性読者から、『俺も彼女の生理日を把握してるよ!』って言われることもありましたし。まだまだ少数派なのかも知れないけど、女性の身体の違いや仕組みを理解しようとしてくれている男性も少しずつ増えているのかなと実感しました」

“100%の女性”なんてどこにもいない

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学生時代から、マスターベーションしていることを公言してきたまおりさん©okazaki

――女性の身体やセクシュアリティの話が“タブー”とされてきたのは、そういったことを口にすることが“女らしくない”という価値観のせいもあるかもしれません。

工藤「これはTENGA時代にマーケティングで学んだことなんですが、日本では男性のマスタベーションにはわりと市民権があってネタにもできますけど、一方で女性のマスターベーションはアンタッチャブルなものという印象がありますよね。

 日本では『大和撫子』的な女性らしさが一般的に求められているから、なんとなく“タブー”とみなされて、女子会でもは自分から『オナニーしてる!』って公言する女性は少ない。こういう価値観があるから、女性がセクシュアリティについて口にすることも難しいのかなと思います。

 でも、欧米では“オナニーはモテない男がやるもの”みたいな価値観があるので、女性用のセルフプレジャーアイテムの方が一般的で、普通に街中のショーウインドウに飾ってあって、売られているんです」

――まおりさんは、世の中で言われている「女らしさ」や「男らしさ」についてどう考えますか?

工藤「それが男女の身体的な違いを示しているなら理解できます。男と女はついているものも違えば、体のリズムも違うから、それをまったく同じにするのは難しい。だからこそ、『生理共有アプリ』のように、お互いに歩み寄ることが理想だと思っています。

 でも、世の中に蔓延している『女はこう』『男はこう』っていう決めつけはイヤですよね……本当にイヤです。たとえば『女性はおしとやかなものである』とか。こういう傾向のすべてを否定することはしないですが、あまり固執するとすごく生きづらくなっちゃいます」

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