元アダルトグッズメーカーの広報が目撃してきた「女らしさ」「男らしさ」と、その行方/工藤まおりさんインタビュー

【この記事のキーワード】

――「女性はおしとやかなものである」というような刷り込みの責任はメディアも負っていると思います。そういう情報を日常的に見たり聞いたりしているうちに、無意識に影響を受けてしまう側面がありますよね。どうしたら刷り込まれたイメージを打ち破ることができるでしょうか。

工藤「私、大学時代は数学科でひたすら証明問題をやっていて、数式をイコールで結ぶことに命を賭けてました(笑)。でも、実社会では必ずイコールになる確かなことなんてほぼない。そもそも、“100%の女性”なんてどこにもいない。みんな女性らしい部分もあるし、男性らしい部分も持ってる。みんなグラデーションなんです。

 だから、『女=おしとやか』みたいなひとつの価値観は、血液型占いでいう『О型=おおざっぱな性格』みたいなもので、『ふ~ん、そういう傾向もあるのかなあ』って聞き流すくらいでいいと思います(笑)。だって、現実には几帳面なО型もいるんだから、おしとやかな男性もいますよね」

――その生きづらさは、社会的モデルとしての「男らしさ」や「女らしさ」問題にも通じますよね。

元アダルトグッズメーカーの広報が目撃してきた「女らしさ」「男らしさ」と、その行方/工藤まおりさんインタビューの画像4

男も女も悩んでいる©okazaki

工藤「昔、弟が『彼女とのデートに行きたくない』とこぼしていたことがあって。理由を聞いてみたら、『俺が全部(デート代を)奢らなきゃいけないから、行きたくない』って言うんです。弟は、デート代は男が奢るべきだと思い込んでいたんですよね。でも、本当なら好きな子とのデートって楽しいものじゃないですか。自分が辛くなったり、不幸になったりする『らしさ』って、いったい何なんだよ、って。女だって、好きな男にだったら奢ることだってありますよね」

――ワリカンも全然ありますしね。

工藤「自分が今こうしてフリーランスという立場になると、もっと仕事を頑張らなくちゃ、稼がなくちゃって思うんですが、そのことがなんだかすごく怖くも思えてきて。男性はいつも社会的にこんなことを求められて生きてるのかなあって思うと、辛くなりました。

 私がフリーランスになるって宣言した時、男友達から『じゃあ養ってくれ!』って冗談っぽく言われたことがありましたが、それってわりと本心だったんじゃないかなあって」

――男が稼いで妻子を養わなくちゃいけない、という決まりのようなものがあるのはおかしいですよね。まおりさんは、男友達から「養ってくれ」って言われても、引くことはありませんでしたか。

工藤「別に引きませんよ! 世の中でこう言われているから絶対、なんてものはないんですよ。

 たとえば、私がTENGAに就職したとき、元同僚から『あんな会社に行ったら絶対、まともな職に転職はできないよ』って散々言われていたんですが、退職するって決めた時は、以前からお世話になっていた別の業界の3社から『ウチにこない?』ってお声がけをしていただきました。その時、『絶対』『できない』っていう周りの意見は、必ずしも正しいものではないんだなって実感しました。常識という既成概念をいったん外してみて気づくこともあると思います」

――最近は、若い世代のアイコンとなっているりゅうちぇるさん、けみおさんなどのジェンダーレスな男性が登場していますよね。彼らはその既成概念をとても軽やかに外しているように見えます。

工藤「きっと、ひと昔前は、ジェンダーレスな男性たちのことを『気持ち悪いな』って思う人は、今より多かったと思います。でも今、彼らには若い世代を中心に羨望のまなざしが向けられている。それは、きっと彼らが、男だからこうしなきゃ、じゃなくて、“自分”がこう思っているからこういう行動をする、好きな服装をするってことを実践しているからですよね。たとえば、『据え膳食わぬは男の恥』なんていう古くさい呪縛からも解き放たれているはずです(笑)」

――そういう「自分の好きを大事にする」価値観が若い世代のスタンダードになっていくことで、社会が変わっていくかもしれません。

工藤「男だから、女だからって前提ではなく、“自分だから”こうしたい、それが基本になっていけばいいですよね。今は、その過渡期であったらいいなと思っています」

(取材、構成:編集部/撮影:岡崎健志)

1 2

「元アダルトグッズメーカーの広報が目撃してきた「女らしさ」「男らしさ」と、その行方/工藤まおりさんインタビュー」のページです。などの最新ニュースは現代を思案するWezzy(ウェジー)で。