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タニタ「個人事業主化」の背景にある、使用者無責任の実態

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タニタ公式サイトより

 今の時代、働き方改革は経営者にとって必須ともいうべき重要マター。政府の奨励にしたがい、長時間労働の是正や残業削減に勤しむ企業が増える中、独自の改革で新しい働き方を模索する動きもある。健康機器メーカーのタニタは、社長が働き方の理想形を考えた末に「社員の個人事業主化」制度をスタートさせた。

 同社は2017年から希望者を対象に、社員を「個人事業主」として独立させ、仕事は業務委託にするシステムを採用しはじめた。同年に独立した元社員8人の平均年収は28.6%上がったという。2019年7月現在、タニタと業務委託契約を結ぶ個人事業主は26人を数える。これらは谷田千里社長が日経ビジネスのインタビューを受けて明らかにしたものである。

 同記事への反響は大きく、記事のコメント欄やSNS上には「非常によい取り組み」「裁量労働制よりは明快でよい」など評価する声も上がった。その一方で、「業績が悪化したら簡単に契約を切られないか」「ブラック企業がよく使う脱法行為」といった厳しい見方も散見される。メディアでは『弁護士ドットコムニュース』が「タニタの取り組みは違法行為になる可能性が濃厚」と批判的に取り上げたことでも話題となった。

 業務委託契約をめぐっては、実質的に雇用契約と変わらないとして労働者側が企業を訴えるケースも多い。タニタと個人事業主となった元社員の関係は、働き方の実態からして果たしてフラットな関係といえるのか。その点が問われているようだ。

「個人事業主への切り替え」で収入と自由度を高めるのが狙い?

 谷田社長は、日経ビジネスのインタビュー記事の中で、「社員の独立をサポートする」と言っている。入社から独立までの流れを簡潔に説明すると、いったんタニタに入社して仕事を覚えてもらった後、雇用契約を解消。その後新たに業務委託契約を結ぶ。これにより、タニタと元社員の関係は、企業と労働者ではなく、業務を委託する委託者と、受託する個人事業主という関係に切り替わる。個人事業主になるのは希望者のみで、すべての社員が対象というわけではない。

 個人事業主というからには、税務署に開業届を出さなければならず、確定申告の義務も生じる。そのための財務諸表の作成、経費や取引内容を複式簿記で細かく記録する作業も必須だ。会社員なら会社に任せてよい会計処理や税務処理もすべて自分で行う働き方が個人事業主である。この働き方をタニタは全面的にサポートするということらしい。

 会社員にはない個人事業主のメリットといえば、自分のがんばり次第で収入アップが見込めること、出勤時間も働く場所も個人の裁量で決められること。また、経費計上の自由度が高く節税効果が期待できること、などが挙げられる。谷田社長も、個人事業主となった元社員全員が報酬アップを実現した成果や、副業OKで出退勤の時間も自由に決められるといったメリットを強調している。

 「残業の削減をすれば改革になるのか」。谷田社長は常々こうした疑問を持っていたという。過労死を招くような長時間残業は避けるべきとしたうえで、「たくさん働きたい人に対してきちんと報いる仕組みがないことが問題」とし、そのアンサーとして「社員の個人事業主化」を提示する。この制度に社長自身手ごたえをつかんでいるようで、「2021年春の入社組は、全員が個人事業主になることを前提として採用するつもり」であることを打ち明けた。

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