タニタ「個人事業主化」の背景にある、使用者無責任の実態

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その働き方は本当に「業務委託」なのか? という疑問

 タニタの働き方改革に対して、労働法との兼ね合いから問題視する向きもある。『弁護士ドットコムニュース』は8月12日の記事で、社員独立を支援する取り組みは「違法行為となる可能性が濃厚」とする弁護士の見解を掲載した。

 記事によると、タニタと個人事業主となった元社員の関係が「委託者と受託者」なのか「雇用主と労働者」なのかは、契約の形式で決まるのではなく、働き方の内容に即して決まる、とのこと。つまり、たとえタニタと元社員との間で契約合意があったとしても、働き方から「企業―労働者」という関係性だと判断されれば、労働基準法の適用は免れないことになるのだ。

 以下のような要素が認められる場合、受託者は労働者に該当する可能性が高いとされる。

1. 業務の内容や遂行方法に関する指揮命令権が企業にある

2. 業務の指示に対する諾否の自由がない

3. 報酬の労働対償性が認められる(報酬は時間給で算定されるなど)

4. 事業者性がない(会社負担の設備や機器を使用)

5. 勤務場所や時間についての自由がない

6. 専属性が高い(委託者発注の仕事しかない)

 日経ビジネスの記事で、谷田社長は「受託内容は社員時代に取り組んでいた基本的な仕事」としている。であれば、仕事の進め方などは社員時代と同様になるかもしれず、1や2に該当する可能性は確かにあるだろう。

 また、「基本報酬は社員時代の給与・賞与がベース」ということは、3の労働対賞性が認められる可能性が濃厚。このように、受託者が労働者か個人事業主かどうかは、働き方や指揮命令の有無、給与体系などの実態を見て判断される。業務委託契約であるにもかかわらず働き方が労働者と変わらなければ、労基法違反に問われることになる。

 その一方で、副業も出退勤時間も自由としていることから、個人事業主としての働き方が認められる部分もある。いずれにしても、日経ビジネスのインタビュー記事だけで違法性があるとの断定はできない。が、弁護士が指摘するとおり、雇用契約と業務委託契約の違い、法律が定める個人事業主の定義を理解しておかないと、知らず知らずのうちに法に抵触するリスクが考えられるわけだ。

労働法の適用を逃れようとする使用者

 過去には、業務委託契約と言いながら実質的には雇用契約と変わらないとして、労働者が企業を訴えた事例もある。

 昨今話題になったのが、冠婚葬祭大手「ベルコ」を相手取り、労働者らが起こした訴訟だ。労働組合を結成しようとした従業員をベルコが不当に解雇したとする問題で、原告側は、ベルコの雇用システムは業務委託契約の乱用にあたるとして、同社の使用者責任を問うた。

 ベルコの正社員数は全従業員数7,002人のうち35人しかいない。残りはすべてパートか業務委託。支部長、支社長であってもだ。しかし実際の業務において、会議の強制参加、ノルマ達成率を記載した報告書の提出、個人事業主なのに異動が発生する人事システムなど、指揮命令下で働く実態があったと原告側は訴える。

 しかし昨年9月、北海道・札幌地裁は、原告とベルコの労働契約を認めず、原告の請求をすべて棄却する判決を言い渡した。原告は10月に札幌高裁に控訴。今年6月に北海道労働委員会は「ベルコの使用者性が認められる」と判断し、ベルコが原告らを解雇したことについて「不当労働行為に該当する」と認定した。現在は控訴審が審理中で、第3回口頭弁論の期日は8月22日を予定している。

 労働法の適用を免れるために、業務委託契約を乱用する使用者も少なくない。そのような現実があるからこそ、タニタの働き方改革に懐疑的な目が向けられるのだろう。収入や働きやすさの面だけでなく、労働法に基づいて労働者の権利が保護されているかどうかにも注視しなければならない。

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