社会

男女平等にしていく必要があると思うなら、みんなフェミニスト/小川たまか×西口想『私のフェミはここから』

【この記事のキーワード】
男女平等にしていく必要があると思うなら、みんなフェミニスト/小川たまか×西口想『私のフェミはここから』の画像1

(左)小川たまかさん著『「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を。』(タバブックス)/(右)西口想さん著『なぜオフィスでラブなのか』(堀之内出版)

 2019年7月20日、『BOOK MARKET 2019』のイベントブースで、ふたりのフェミニストによるトークイベントが開催された。

 小川たまかさんは、著書『「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を。』(タバブックス)で、巷に溢れるCMやネットの炎上問題など身近な物ごとから、女性蔑視を拭い去ろうと声を上げ続けている。

また、西口想さんは、著書『なぜオフィスでラブなのか』(堀之内出版)で、男性中心の日本社会における「会社内恋愛」を、独自の視点で読み解く。

小川たまかさんと西口想さんは、それぞれの見地から性差別の問題に取り組まれている。お二人は、どういった経緯でフェミニストとして活動するようになったのだろうか?

「フェミニズムってよくわからないけれど、現在の社会構造にモヤモヤしている」――小川たまかさん、西口想さんのトークイベントは、そんな人にこそ、ぜひ聞いてほしい内容だった。本稿ではその一部をレポートする。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
小川たまか(おがわ・たまか)
1980年、東京都生まれ。立教大学大学院文学研究科修士課程修了。2008年から編集プロダクション取締役、2018年4月に独立し、フリーライターに。Yahoo!ニュース個人「小川たまかのたまたま生きてる」などで執筆。著書に『「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を。』(2018年、タバブックス)。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
西口 想(にしぐち・そう)
1984年、東京都生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業後、テレビ番組制作会社勤務を経て、現在は労働団体職員。 「マネたま」にて「映画は観れないものだから心配するな」を連載中。著書に『なぜオフィスでラブなのか』(2019年、堀之内出版)。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

フェミニズムと親の影響

西口:僕は、小川さんの執筆されている「私たちの母の話」という連載記事が好きなんです。様々な分野で活躍されている女性たちに、母親の生い立ちや人生の話を聞いていく、という連載ですね。これがすごく面白くて、この面白さはなんだろう? と考えていたりしていました。

小川:「私たちの母の話」は、私と同世代や少し上の世代の女性たちに、それぞれ自分のお母さんの話をしてもらおうという主旨で、光文社の「本がすき。」というサイト内で不定期連載しているものです。

 この連載を始めたのは、お父さんの“親父の背中”的な話は、『プロジェクトX』(NHK)とか、日経新聞の「私の履歴書」とかで世に溢れているのに、お母さんについては“専業主婦”というイメージでひとつにくくられがちだな、って思ったからでした。

 実際に戦後のお母さんの話を聞いてみると、専業主婦でも地域でボランティアをやっていたとか、放課後の子どもを無償で預かるようなことをやっていたとか、子どもを産んでから大学に行ったとか、そういう多様な話がたくさん、たくさん出てきて。これを語り継がなくていいのか、と思ったことが連載を始めたきっかけです。

 反響が大きかったのは、テキストレーターのはらだ有彩さんのお母さんの話ですね。はらださんの『日本のヤバい女の子』(柏書房/2018年)を読まれた方はご存知だと思うんですが、あとがきにお母さんは<ゴリゴリのフェミニストだった>って書いてあったんですよね。さらに、はらださんのお母さんは日本で初めての24時間対応の性暴力被害者支援センターである大阪「SACHICO」で働かれていたということで、そのエピソードをお聞きしました。

西口:小川さんの連載は、母親本人にインタビューするのではなく、娘から見たお母さんの像を語ってもらうという“間接話法”のかたちを取っていて、それ自体ひとつの物語になっているのがとても面白いです。

小川:これまで、“母娘”の描かれ方って、美しい母娘愛だったり、もしくは確執ありきの物語が多いな、という印象があって。でもそれだけじゃないはずだよねというか、戦後史もなぞらえつつ話を聞いてみたいと思うところはありました。

 西口さんも、ご自身の本のあとがきで、お母さんがフェミニストだったってことを書かれていますよね。お会いする前から、人づてに「西口さんはフェミニストの息子だよ」という情報を聞いていて、西口さんにもすごく興味がありました。

西口:僕の母親はフェミニストなんですが、テレビで見る著名なフェミニストの方々とは異なる佇まいの人です。議論を引っ張っていくというより、いつも人の話を「うん、うん」と静かに聞いているタイプ。記者という職業柄もあると思うんですけど、アグレッシブさはほとんどなくて。

小川:新聞記者の中にも、アグレッシブなタイプの人っているじゃないですか。でも、そうではなかったんですね。

西口:母は自分がフェミニストであることを息子にも言ってなかったような気がするんですが……でも、明らかにフェミニストなんです。例えば、父親がうっかり「お母さん」って呼ぶと、母親が「私はあなたのお母さんじゃない」って言い返す、というのは家庭内のお決まりのワンシーンでした。子どもからしたら「また言ってる(笑)」って感じでしたけど、母親はフェミニストだからそう言っていたんだなと今は分かります。

小川:お母さんが間違えて、「お父さん」と呼ぶことはなかったんですか?

西口:言っていたと思うんですよね。でも、お父さんは「私はあなたのお父さんじゃない」とは言わなくて、ぼんやりしている(笑)。

 先ほど、小川さんから「フェミニストの息子」とご紹介いただきましたが、僕自身が「フェミニスト」を公言することには、躊躇するところがずっとあったんです。でも近年、話題になったフェミニズム本『男も女もみんなフェミニストでなきゃ』(河出書房新社/2017年)や、『私たちには言葉が必要だ』(タバブックス/2018年)では、フェミニストの定義についてシンプルな考え方が示されています。つまり、「現状認識として、この世の中が男女平等になっているか、それともまだ男尊女卑的なところが残っているか。男女平等になっていないとしたら、これから平等に近づけていく必要があるか」という2段階の問いを立て、「①いまも性差別が存在している」と認識し、「②男女平等に近づけて行く必要がある」と思う人は、みんなフェミニストだとされているんですよね。フェミニストっていうと難しく考えられがちですが、僕もそのくらいの定義でいいんじゃないかな、と思っています。

小川:そう思います。

1 2

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。