社会

「贅沢するな」と叩かれる相対的貧困、子供の学習意欲や自己肯定感を削ぐ悪影響も

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「Getty Images」より

 8月7日放送の『深層NEWS』(BS日テレ系)では、自民党議員で子どもの貧困対策推進議員連盟会長の田村憲久氏と日本大学教授の末冨芳氏が子供の貧困の状況や改善点などを議論した。

 厚生労働省が2016年に発表した「国民生活基礎調査」によると、社会で普通に生活するためのお金が十分にない状態“相対的貧困”に該当する子育て世帯の割合は13.9%。つまり、子供の7人に1人が貧困状態にある。この数値を用いると、「相対的貧困の状態にある子供は200万人を超えます」と末冨氏はいう。割合だけ見ると低く感じてしまうが、実数で見ると大きく印象が変わるのだ。

 それだけではない。相対的貧困だけでなく、生きていくのに衣食住を欠いている状態“絶対的貧困”にある子育て世帯も少なくないという。末冨氏は、「家の水道が止まっているので、子供が公園に水を汲みに行ったら、近所の人から『どうしたの?』と声をかけられ、絶対的貧困状態にあったことが発覚したというケースは、日本各地の自治体で事例があります」と話す。日本に、それほどの貧困が存在することは確かだ。

 また、世帯収入が少ないわけではなく一見すると困窮していない家庭でも、親がギャンブル依存やアルコール依存などに陥って適切な養育ができず、まともな生活が送れていない子供もいる。相対的貧困率は世帯収入から算出されるが、世帯収入だけを見て子供の貧困問題を理解してはいけないと、田村氏は警鐘を鳴らす。相対的貧困・絶対的貧困にある子供は、数字が示す以上に、そして貧困状態にない人々が想像している以上に、多いと考えられる。

相対的貧困は子供の自己肯定感を奪う

 2016年8月、『NHKニュース7』が子供の貧困をテーマにした特集を放送し、金銭的な余裕のなさから専門学校への進学をあきらめざるを得ないという女子高校生を紹介し、ネット炎上が巻き起こったことを覚えているだろうか。イラストレーターになりたいという夢を持つが、進学費用の50万円を捻出することが難しい、また自宅にはエアコンやパソコンがないという家庭の事情が、“炎上”したのだ。

 経緯としては、放送後に女子高校生のTwitterアカウントが晒され、アニメグッズやイラスト用のペンを持っている、映画や舞台を鑑賞している、1000円のランチを食べていた等々の投稿が「貧困なんて嘘、やらせではないか」と盛大に叩かれたのだ。

 これは「相対的貧困といっても、贅沢しなければ生活できるでしょ?」「趣味や遊びの費用を切り詰めて生活すれば問題ない」といった世間の声を非常に多く炙り出した。相対的貧困は、これだけ軽視されているのだ。

 しかし『深層NEWS』においては、相対的貧困であることは、子供の「機会」を奪い、自己肯定感を損なうと解説された。

「相対的貧困の子供は、お金のかかる部活に入ることができない。そうすると、自分がやりたいことを諦めなければいけないので子供の心は深く傷ついてしまいます。そして、学校生活そのものが楽しくなくなってしまい、学校から心が離れて学力低下につながる……というケースは非常に多いです。お金がないことだけが問題なのではなく、子供の頑張る機会が奪われていくことが貧困問題の深刻な側面なのです」(末富氏)

 清貧幻想に浸っていると、「貧乏に屈して性格がねじまがった子供が悪い」ひいては「親のしつけが悪い」といった自己責任論に帰結するのだろう。また、「昔はみんなお金がない中で工夫していた」という根性論も、ありがちだ。しかし、お金がない中で工夫していた世代は皆、立派に育ったと言えるのか。不遇な子供時代のカゲを、成人後にあっさり払拭できるものなのだろうか。

 「これまでこうだった」から、「これからもこのままでいい」という考えでは社会は進歩しない。特に子の成長過程に関することには、「もっと、より良く」というポジティブな発想で絶えず試行錯誤することが不可欠だろう。貧困は「我慢すればいい」ものではない。

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