台湾、北朝鮮に波及も
香港の動きに強い関心を持ってみているのが、台湾の蔡英文総統です。習近平政権が台湾を飲み込もうとする一方で、蔡英文総統は中国本土とは距離を置こうとしています。香港問題は、この蔡英文氏にはある意味、反習近平政権の動きという意味で援軍になっています。香港の動きいかんでは、台湾でも反北京政府の動きが高まる可能性があります。
この台湾にも米国が関与しています。米国共和党はもともと台湾政府を中国の正当な政府と見ていた歴史があり、今のトランプ政権も北京政府の意向に反して、台湾に武器輸出を認めています。米国議会も先般、台湾へのF16戦闘機66機、GE社製のエンジン75基の輸出を承認しました。
習近平主席はこうした米国の動きに神経質になっています。しかし、すでに米国とは貿易戦争でエネルギーを費やしているので、台湾問題まで反発できていません。いずれにしても、台湾と米国の軍事的接近は北京政府にとって頭痛の種です。
香港問題が北朝鮮に波及する可能性もあります。前述のように、金王朝は代々江沢民派と親しくしてきましたが、同時にネオコンとも密な関係にあります。香港の締め付け強化は江沢民派には打撃で、北朝鮮は習近平政権を信用していないだけに、最後は江沢民派支援に回る面があります。
第2の天安門なら中国分裂の危機
世界の関心が香港に集まる中で、香港政府は反政府デモを犯罪とし、厳重に取り締まると宣言しています。そして、メディアを通じて政府がデモ隊などの大規模行動に対処し、制圧する訓練の模様を流しています。さらに、警察の車両が香港に集められるばかりか、米国の衛星がとらえた画像では、中国が人民解放軍の戦車などを香港周辺に集めていることも紹介されています。
長期化する反政府行動を「犯罪」としていながら、いつまでも収拾できないなら、最後は武力行使しかないとの見方も増えています。今年はおりしも「天安門事件」から30年の節目の年です。もし狭い香港で人民解放軍が武力で制圧しようとすれば、何万、何十万もの犠牲者が出ないとも限らず、まさに「第2の天安門事件」となりかねません。
そうなると、中国全土で政府への反発が強まり、分裂の危機が高まって習近平政権は大きく揺さぶられます。西部ではすでに新疆ウイグル自治区で多数のイスラム教徒が「漢化」のために施設に収容されていると言い、周辺も含めて習近平政権への反発が高まっています。香港で軍事力行使となれば、新疆も台湾も北朝鮮も一斉に反発し、中国には大きな分裂の圧力がかかります。
旧満州ユダヤ居住地構想
以前より英国ではロスチャイルドを中心に、米国ではロックフェラーを中心に、中国分割論があり、中でも旧満州をユダヤ人の居住地にする計画があったと言います。中東のイスラエルだけでは不安定で、決して安住の地とは言えないからか、「アジアのスイス」のような地を求めていました。日本の北海道もその候補のひとつでした。
ロスチャイルド・グループは資金支援を含めて、日露戦争、満州事変に関与したといわれ、結果として関東軍によって満州の基礎的なインフラは整備されました。しかも、代々、中国政府は満州を「野蛮人の住む地」として敬遠し、近づこうとしなかっただけに、米英としては満州を分離し、ユダヤ人居住地に充てられると考えていたようです。
現在のトランプ政権はロスチャイルド、ロックフェラーとは一線を画したいとしていますが、イスラエルやユダヤ人支援という点では負けていません。香港問題で武力行使となれば米国も黙っていないというだけに、通商交渉を超えて新たな米中の摩擦に発展する可能性があります。その場合、満州分離論に便乗してくる可能性も否定できません。
中国経済は米国との貿易戦争でかなり疲弊し、香港問題で米英と対立する余力はないと見られますが、中央政府の面子にかけて強硬論に出ると、思わぬ波紋が広がり、中国分裂、政権の動揺が広がるリスクがあります。香港問題からいよいよ目が離せなくなりました。
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