ライフ

子どもの“遊ぶ権利”を尊重する「プレーパーク」「プレイセンター」、子育てに悩む親にも好評

【この記事のキーワード】
子供の人権を尊重し、保護者の主体性を育む「プレイパーク」とは?の画像1

「Getty Images」より

 今夏も、悲痛な水の事故が相次いで起こった。子育てをする中で、子供をできるだけ危険に晒すことなく、気軽に遊ばせることの出来る外遊びの場を設けることは、多くの親が課題に感じているだろう。

 株式会社ボーネルンドが幼稚園・保育園から小学6年生の子供を長子に持つ30代~40代の母親を対象に実施した調査によると、子供たちの外遊びの頻度は減少しているという。「あなたのお子様は、週にどのくらいの頻度で体を動かす遊びをしていますか?」という設問に、「たまに(週に1~2日程度)」という回答は、2013年(14.2%)のほぼ倍の28.3%に。さらに、「しない(月に1日未満)」という回答は、2013年では 0.8%だったのに対し、2018年では16.2%と大幅に増加した。

 子供が外遊びをする機会が減少している要因は、「公園、空き地等の空間が少なくなっているから」(46.0%)が最多。次いで、「一緒に体を動かして遊ぶ仲間が少ないから」(40.6%)、「安全面や近隣トラブル等の問題で、子どもが外で遊ぶことに不安があるから」(39.2%)となった。

 親としては、出来れば我が子には適度に体を動かす遊びをし、心身を丈夫にしたいという思いがあることだろう。子供が保育園や幼稚園、小学校などに通っていれば、外遊びが子供の健全な成長に良い影響を与えうるかという情報は、散々「お知らせ」されるものだ。

 また、北里大学准教授の山北満哉氏らの調べでは、子供のスポーツ活動は、近年注目を集めている非認知能力の一つ“Grit(やり抜く力)”を育むことに関連している可能性があると指摘されている。

「そんなことを言われても、公園や空き地などは減少しているし、安全面の不安は強いし、近所に一緒に体を動かして遊べる仲間もいないんですけど……」

 困惑し、罪悪感を覚えてしまう親もいるかもしれない。

 そこで、プレイパーク(冒険遊び場)を定期的に実施するなど、子供が遊べる場を提供しているNPO法人「こだいら自由遊びの会」の理事長を務める足立隆子氏に、話を伺った。

足立隆子
NPO法人日本プレイセンター協会副理事長・スーパーバイザー。NPO法人こだいら自由遊びの会理事長。2002年に東京都国分寺市で日本初のプレイセンター「ピカソ」を立ち上げた。2018年からは子ども食堂も開設するなど活動は多岐にわたる。

プレーパークは子どもたちの遊びを保障する場

 そもそもプレーパークとはどういうものなのか。

足立氏「発祥はデンマークです。戦後の荒廃してしまった状況の中で『子どもたちが遊べる場を保障したい』と考えた公園のデザイナーさんがアンケートや取材など調査をした結果、子どもが楽しく遊べる場所は“廃材置き場”ということがわかりました。誰からの制約もなく廃材置き場で自由に遊ぶことが、成長期の子どもには非常に有効なんですね。この考えをベースに、子どもが主体的かつ自由に遊ぶことが出来つつも、大きな怪我をするリスクを加味して、遊びの場の専門家“プレーワーカー”や大人が見守りながら子どもの遊びをサポートする場がプレ―パークです」

 足立氏がプレーパークを始めたキッカケは、自らの子育てだった。

足立氏「武蔵野美術大学にある“造形教育研究会アトリエちびくろ”というサークルが、毎年夏休みに子どもたちを茨城県にある廃校に連れて行って、自然に触れて創作的な活動をする合宿活動をしています。その活動にうちの子どもが毎年お世話になっていたのですが、子どもが泥だらけになりながらもノビノビ遊ぶ様子を見て、自然の中で遊ぶことの大切さに気づきました。ただ、ボール遊びさえ禁止している公園が珍しくないように、そういう場は自分で整備しないと無いんですよね。そこで、『大人が“子どもの遊ぶ権利”を保障しなければいけない』という思いからプレーパークを始めました」

プレーパークでは、泥遊びや穴掘りといった身体や衣服が汚れる遊びや、大きなブランコや高さのある滑り台など危険を伴う遊びもやる。そのため、まずはプレーパークについての価値観を保護者と共有する必要があるという。

「ここに来なかったら虐待していたかも…」という声も

 しかしそもそもプレーパークに来る保護者の中には、“子どもの面倒を見てくれる場”と解釈している人も少なくはなかった。もちろん積極的に子どもたちの遊びに参加する保護者もいるが、子どもと主体的に関わろうとしない保護者が気にかかった。そんな時、足立氏は“プレイセンター”の存在を知った。

足立氏「プレイセンターはニュージーランドが発祥で、就学前の子どもがいる保護者たちが主体的かつ協力的に子どもを見守りながら過ごす場です。ニュージーランドの保護者は『この子のために自分も子育てについて勉強したい』『この子のことは自分が一番知っているから責任を持って育てたい』という誇りが非常に高く、子どもと関わることにとても前向きです。ただ、日本では専門家任せしがちと言いますか、保育士や教師に子どもを“任せる”という意識が強いように感じました。ですので、保護者が子どもと主体的に関わる意識を高めてもらうために、東京都国分寺市に“ピカソ”というプレイセンターを始めました」

 プレイセンターでは、子育てで困ったことを気軽に打ち明けられる土壌ができている。

足立氏「子育てって本当に難しいです。特にその子どもが初めてだとなおさらです。それなのに、世間の『子育ては親の責任だ』というプレッシャーに押しつぶされてしまい、『自分はダメな親なんだ』と追い込まれている保護者も多くいます。ですので、ピカソに来てくれた保護者には『もっと他者を頼って良いよ』『子どもはみんなで育てていこうよ』というメッセージを伝え、『人に助けてもらってナンボ』と考えるように促します。そういった助け合いの意識がピカソ内には溢れているので、『ピカソに来てなかったら虐待していたかもしれない』と口にする人も少なくないですね」

 また、子育ての話題だけでなく、結婚や出産を機に渋々キャリアを断念したことへの不平不満などを口にする人もおり、日常生活を送るうえで溜め込んだストレスを発散する“保護者の居場所”としても機能しているようだ。

子供の成長する力を知る必要がある

(写真提供:足立隆子氏)

 行政の取り組みにより子育て広場などの保護者が集える場は増えたが、足立氏はプレーパークのような子供が遊べる場が少ない現状には不満を感じているといい、「あらゆる地域でも言える話ですが、小平市のプレーパークを常設にしたいです」と訴える。

足立氏「神奈川県川崎市に、“川崎市子ども夢パーク”というプレーパークがあるのですが、そこをロールモデルにしたいですね。川崎市は“子どもの権利条例”が定められているので、市はこの施設にかなりの予算をかけています。この施設には、不登校の子どもが成長・勉強できる場“フリースペースえん”も併設されていて、様々な事情のある子どもたちが一緒になって勉強したり遊んだりすることができます」

 川崎市のように子供の人権を尊重する街作りのためにも、“子供の成長力”を信頼するべきだと、足立氏は語気を強める。

足立氏「“子どもはしつけるもの”という意識がありますが、子どもには大人のサポートがなくても成長できる側面を持っています。植物に例えると、種を土に植えて水をあげているだけでも良いんですよね。その種の中には芽になる部分や枝になる部分が備わっているので、周囲の人があれこれ手出しをしなくても環境を整えれば花は咲きます。開花を邪魔するものを取り除いて、むやみに芽や枝に触らないように、フォローしつつ見守るようなスタンスを持つことが大事です。

 過保護になりすぎるのではなく、肯定的な言葉かけをするだけでも子どもを成長させる有効な肥料になります。それをやるだけでも、子どもは健全に育ちます。成長の過程の中には、手が付けられないくらいのやんちゃな時期もありますが、それも大人になるためには大切な時期であると、保護者だけでなく子どもがいない人も知っておく必要があります。それらのことが理解された先に、子どもの人権が尊重され、遊び場を保障する適切な取り組みをスタートできると思います」

 

・イベント情報
ふくしまキッズプロジェクトinこだいら

日時:10月12日(土)~10月14日(月)
場所:小平市中央公園や近隣の公園・野外

ボランティアスタッフ募集(企画・運営、福島への送迎、活動場所への往復の車の運転、写真スタッフ、遊びスタッフ等)
お問合せ:090-6033-5524、hosoeguri1226@ybb.ne.jp

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。