社会

日本全体が「在特会」のような現在、「嫌韓報道」に埋め尽くされた社会の危険性に気づいてほしい/安田浩一インタビュー

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──メディアの報道による影響は、市井の人々の間で着実に出始めているように思います。

安田 そうですね。喫茶店や居酒屋でふいに飛び込んでくる文言に、背中の筋肉が強ばるような機会っていうのが、ものすごい増えたように感じます。
個人的な話ですが、少し前に、スーパー銭湯で湯船に浸かっていたら、30代前半ぐらいの若いグループが入ってきて、いきなり「朝鮮人がね」という話を大きな声でし始めました。すぐに話題が他に移ったので私と口論するには至りませんでしたが、やはり、心臓がドキッとした。一瞬、全身が強張りました。
飲み屋で話しているときに、少し声を落として周囲に聞こえないようにそういう話をすることっていうのは、昔からあったと思うんです。でも、この場合は違いますよね。周囲に人がいようといまいと、躊躇がなくなってしまっている。この言葉を使うことで誰かを傷つけているかもしれない、周囲で不愉快な思いをする人がいるかもしれない、というためらいがない。
そういった日本社会の空気をメディアがつくりだしてしまっている。メディアを通じて日がな、隣国に対する怨嗟や中傷にまみれた言葉が発信されればこうなるのも当然のことです。
そしてこれは、ある意味で、在特会など差別主義者たちの「実績」によるものかもしれない。ヘイトスピーチを繰り返すことで、とことん差別のハードルを下げてしまった。その結果がいまです。現在の在特会には力はないし、同会に限定すれば実態もないに等しいと思いますが、この社会状況なら彼らの存在意義なんてない。かつては路上で叫ばれていた言葉を、彼らより遥かに信用も影響力もある大手メディアが繰り返し用いているわけですから。恐ろしいことになってしまった。

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