日本全体が「在特会」のような現在、「嫌韓報道」に埋め尽くされた社会の危険性に気づいてほしい/安田浩一インタビュー

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差別の「正当性」を大声で触れ回るメディア

──新著『愛国という名の亡国』の「まえがき」にも<在特会などのわかりやすいレイシスト集団を必要としないほどに、日本社会の極右化が進んでいるようにも思えるのだ>という一文がありますが、悲しいことにその状況はここ数週間でますます進行したわけですよね。私は現在の日本が太平洋戦争の泥沼へと突き進んで行ったのと同じ道を歩んでいるように思えてならないんです。

安田 日中戦争時には「暴支膺懲(ぼうしようちょう)」というスローガンありましたよね。「暴虐な中国を懲らしめよ」といった意味の四文字熟語ですけど、大日本帝国陸軍が掲げたこのスローガンをメディアがしきりに取り上げ、人々は「暴支膺懲」が書かれたのぼりを掲げながら街を練り歩いたわけです。
私はもちろんそれを実際の目で見たわけではないけれども、当時の熱狂っていまと似てるんじゃないかと思います。敵を設定し、その敵を潰すことを国民共通の目標にする。その盛り上がりの結果として行き着いたのが無謀な戦争でした。
いまは当時以上に平和への思いもあるだろうし、簡単に同じ道を辿るとまでは断言しないけれども、一定のリアリティをもって戦争というものを考えざるを得なくなってきたというのは事実です。

──当時と同様に、国民の憎悪に火をつけて扇動しているのは間違いなくメディアであり、彼らの責任は重いと思いますが、情報を発信している側にそういった想像力はないのでしょうか?

安田 「週刊ポスト」の件でいえば、「あの企画によって誰かが傷つくかもしれない」、もっと言えば、「その出版物によってこの社会のなにかを壊してしまうかもしれない」という想像力はなかったんだと思う。
そして、それは「週刊ポスト」編集部だけに限った話ではない。『ゴゴスマ』の製作スタッフもそうだったんじゃないか。あそこでなされた武田さんの発言に対して「なんでそんなに批判されるのだろうか?」と首を傾げているテレビ局関係者も少なくないと思います。自分たちが生み出すものがどんな未来につながっていくのか、といったことに対する鈍感さはメディアのなかで確実にあります。

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