社会

日本全体が「在特会」のような現在、「嫌韓報道」に埋め尽くされた社会の危険性に気づいてほしい/安田浩一インタビュー

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──記事を読んだ人がどう思うかを想像することですよね。自戒も込めてそう思います。

安田 なんで私がこんな風に断言しているかというと、メディアの人と日常的に言葉を交わすなかで、「なにか問題ありますかね?」と問われることが少なくないからです。
メディア関係者と話していると彼らは「現在の日韓関係がこんなことになってしまったのは悲しいことだし、日本に住んでいる韓国の人、在日コリアンの人にとっても不幸なことだろう。でも、問題は向こうにもある」と、一見穏当な問いかけをしてくるわけですけど、そもそもこの考え方自体が間違っているわけですよ。
こういう考え方を話すことは、差別に「理由」があると大声で触れ回っているのと同じことだと思うんです。
差別に理由なんかあっちゃいけないんですよ。
差別に理由が存在するのだとしたら、黒人差別、アラブ人差別、はたまた海外諸国に私たちが行った際に起きるアジア人差別や日本人差別も認めざるを得なくなってくる。だから、理由をもうけることにとって差別を肯定することは、なにがなんでも認めちゃいけないんです。クズな人間に対して、そのクズっぷりを指摘することは構わないけれど、社会的な力関係を利用したうえで、相手が抗弁できない属性を叩くことは、絶対に許されない。

──関東大震災のときは、緊急事態に乗じて発生したデマによって「理由」が設定されて、おぞましい悲劇が起きました。

安田 1923年のちょうどいまごろ(注:取材は9月3日に行われた)には、あらゆる偏見とデマが渦巻くなか、「朝鮮人だから」という理由で多くの人が殺された。しかも、そのときの加害者はまともに裁かれていない。
それはいまでも続いています。なにか災害が起きるとツイッターなどを通じてデマが拡散されますし、しかも、最近は「どこどこで怪しい人を見た」とか、情報が具体的になってきている。いまはキーボードで文字を打っているだけですけど、その手に金属バットやゴルフクラブやナイフが握られる日が来ないとも限らない。
結局、日本社会は100年近く前の悲劇から真摯な反省をしていないわけですよ。

カウンターの動きはまだ、ちゃんとある

──社会状況がこうなったときにストッパーの役割を果たすべきは日本政府なのだと思いますが……。

安田 よく「草の根保守」とか「草の根右翼」みたいな言い方があるけど、肥料も水もなくて草が育つわけはなくてですね。肥料を与え、光を照らしているのは、間違いなく「国家」という存在ですよ。現在の状況に関して具体的に言えば、安倍政権です。メディアが自発的にキャンペーンとして始めただけ、とも思えない。
「外交の安倍」と言ってきたけれども、河野太郎外務大臣をはじめとした閣僚が分かりやすい画でもって国民の憎悪に火をつけ、その政府一丸となった大芝居に付き合わされることで、果たして日本社会は住みやすいものになったのかどうか。

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